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連載「DeepTech Frontiers第一回

「混ざらない」を組み合わせる。銅を超える放熱素材は、黒鉛の隙間から生まれた

「混ざらない」を組み合わせる。銅を超える放熱素材は、黒鉛の隙間から生まれた

グラファイト(黒鉛)にアルミなどを高圧で押し込む独自の溶湯鍛造技術で、銅より放熱し、かつ膨張しにくい複合材料を作るアドバンスコンポジット。IVS2025 LAUNCHPAD優勝の同社が台湾のAIエキスポに出展した。秘書としてイベントの現場を回すAKIYOSHI氏に、技術と台湾展開の手ごたえを聞いた。

加藤 慧佑加藤 慧佑
公開 2026.07.13更新 -

半導体の発熱はもう銅やアルミでは抑えきれない。GPUの性能が上がるほど、冷やす側の材料が限界を迎える。アドバンスコンポジットは、グラファイト(黒鉛)にアルミなどを高圧で押し込む独自の溶湯鍛造技術によって、銅より放熱し、かつ膨張しにくい複合材料を作っている。IVS2025 LAUNCHPADで優勝を果たした同社が、台湾のAIエキスポに出展した。秘書としてイベントの現場を回すAKIYOSHI氏に、技術と台湾展開の手ごたえを聞いた。

この記事でわかること
  • 「混ざらない」と言われた素材同士を組み合わせる、複合材料の3つの領域
  • 銅より放熱して膨張しにくい素材が、GPU時代に効く理由
  • 台湾出展で見えた、日本のディープテックの産業展開の勝ち筋

「硬くて軽い」「めっちゃ放熱」「鉛フリー遮蔽」の3領域

加慧
加藤 慧佑

アドバンスコンポジットの技術を一言でいうと?

AKIYOSHI

素材をより強くする技術です。中でも、いくつかの素材を組み合わせた「複合素材」の研究開発をメインにやっています。大きく3つの領域があって、1つ目が「硬くて軽い素材」です。今までと同じ硬さで軽くなれば、それだけ運動エネルギーが下がるので、めちゃくちゃ省エネになります。すでに車の製造ラインや半導体製造装置の部品として使われていて、エアコンやデータセンター用の空調部品としても開発が進んでいます。そして2つ目が「めちゃくちゃ放熱する素材」で、3つ目が「鉛を使わずに放射線を遮蔽する素材」です。

AKIYOSHI

鉛筆の芯の「隙間」を埋めるという発想

加慧
加藤 慧佑

「めっちゃ放熱する素材」は、どういう仕組みですか?

AKIYOSHI

理論上、いちばん放熱する材料はダイヤモンドなんですね。でもダイヤモンドは硬くて加工しづらいから、放熱材料として使われることはほとんどありません。それなら同じ炭素でできているグラファイト(黒鉛)はどうかという話になるんですが、グラファイトは中に空気の隙間がいっぱいあって、この空気が熱伝導の邪魔をしてしまいます。じゃあ「この隙間を別のもので埋めればいいんじゃないか」という発想から生まれたのが今回の素材です。もともとグラファイトとアルミは相性が悪くて、アルミで隙間を埋めることはできないと言われていたんですが、実現できた。それがこの素材のスタートです。

AKIYOSHI
加慧
加藤 慧佑

銅より放熱して、しかも膨張しにくいというのは?

AKIYOSHI

GPUなどの性能が上がって、ものすごい熱を持つようになりました。今までの銅やアルミでは、もうその熱を放出しきれなくなってきています。うちの素材は銅よりも放熱するだけでなく、熱膨張も小さいのが特長です。通常、熱伝導が良い材料は熱膨張も大きくなります。でも、プロセッサー自体の熱膨張は小さいから、この膨張差によって中が割れて空気が入って放熱能力が一気に下がったり、壊れたりします。うちの素材はそれが発生しづらいんです。

AKIYOSHI
加慧
加藤 慧佑

放射線遮蔽の素材は、どういう場面で使われますか?

AKIYOSHI

原発や医療分野はもちろんですが、意外と知られていないのがスーパーコンピュータやデータセンターでの用途です。実は中性子線が飛んでくるとプロセッサーがエラーを起こすことがあって、そういうものを防ぐことができます。

AKIYOSHI

ベース素材から、顧客ごとのカスタムへ

加慧
加藤 慧佑

技術的にいちばんユニークな点はどこですか?

AKIYOSHI

単にその3領域ができますというだけではなく、これがベースで、そこからさらにカスタムできる点ですね。「これとこれは、この割合で組み合わせることはできないだろう」と言われていたものが、できちゃう。さらにそこから、お客様ひとりひとりのニーズに合わせて細かく変えていくこともできる。膨大なトライアンドエラーの積み重ねによってできた技術なので、うちの工場にはガラクタもいっぱいあります(笑)

AKIYOSHI

産業展開力の台湾と、基礎研究の日本

加慧
加藤 慧佑

今回、台湾に来た目的は?

AKIYOSHI

お世話になっている「Startup Island TAIWAN」東京ハブの担当の方を通じて、今回のイベント主催者から「日本の企業を何社か展示会に出展させてくれないか」と声をかけてもらったのがきっかけです。日本は基礎研究力が優れていて、ノーベル賞受賞者も多い。ただ、それを産業に展開する力が弱いと言われています。一方、台湾はその産業展開の能力が高い。実際に話してみるとすぐに深い話になりますし、ポジティブに「とりあえずやってみようぜ」となりやすい。半導体系の製造業も多く集まっているので、うちとシナジーがありそうな企業が本当に多いんです。

AKIYOSHI
加慧
加藤 慧佑

台湾での手ごたえは?

AKIYOSHI

実際に製品サンプルを持ち比べてもらうと、皆さんめちゃくちゃびっくりされます。会場には投資家の方やハードウェア系の方もいらっしゃって、これは間違いなく話が進むな、という方も何名もいました。

特にパソコン系のハードウェア、たとえば過酷な環境用のPCを作っている会社のように、既存の素材をうちのものに置き換える強い理由がある相手とは、スムーズに話が進むんじゃないかと思います。

AKIYOSHI

産業の高度化と環境負荷の低減を両立させる

加慧
加藤 慧佑

この素材はどんな未来を作りますか?

AKIYOSHI

今、いろいろな産業領域がぶつかっている技術的な壁、これを突破することができます。また、僕がよく言うのは「産業の高度化と環境負荷低減の両立」です。普通、産業を高度化させるとエネルギー消費が激しくなって、環境負荷が高くなってしまう。それに対して、うちの材料は性能が上がるだけでなくエネルギー消費も下がるため、そんな未来が実現できると思います。特にこの「めっちゃ放熱する素材」に関しては、2~3年後にはいくつかの領域でスタンダードな材料になっていてもおかしくないので、そんなに遠い話でもないと思います。

AKIYOSHI
加慧
加藤 慧佑

あなたにとってディープテックとは?

AKIYOSHI

「知的好奇心が溢れていて、ブレーキがぶっ壊れてる人達が、周りからギャーギャー言われても無視して突き進んだ結果、作り出せる世界」なんじゃないかと思います(笑)。原点は知的好奇心かもしれないし、社会課題の解決かもしれない。でも、普通なら「やめようよ」と言われるような領域に果敢に挑んでいく人達が、形にしていくものだと思います。

AKIYOSHI
会社概要

アドバンスコンポジット株式会社 ── 2015年設立(静岡県富士市)。代表取締役社長:服部淳一。金属基複合材料(MMC)の研究開発・製造。独自の溶湯鍛造法により、硬くて軽い複合材料、高放熱・低熱膨張材料、鉛フリー放射線遮蔽材料を展開。IVS2025 LAUNCHPAD優勝。2024年、環境エネルギー投資、信越化学工業、ダイキン工業、電通グループなどから総額15億円の資金調達を実施し、2026年7月、新たに京都大学イノベーションキャピタルからの資金調達を発表。従業員50名。

取材:Keisuke/文:DEEPPOINT編集部/取材日:2026年6月

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加藤 慧佑
事業開発
加藤 慧佑

Web3企業にて、グローバルCEXへの上場対応、海外プロジェクトとのアライアンス、コミュニティ形成、事業開発を担当。国内外のプロジェクトにおけるコミュニティマネジメントやパートナーシップ構築に強みを持つ。DEEPPOINTでは、ディープテック企業・研究者・投資家とのネットワーク形成、企画開発、コミュニティ運営、事業連携の推進を担う。