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連載「日本を経営する第六回

【第6回】「政策での敗北」を政策で取り返す——半導体産業の再起

【第6回】「政策での敗北」を政策で取り返す——半導体産業の再起

かつて世界シェア50%を誇った日本の半導体は、日米半導体協定を経て数%まで後退した。ラピダス・TSMC誘致に続いて必要なのは、生成AIに不可欠なHBM(最先端メモリ)の国内生産拠点——半導体誘致に自ら携わった筆者が「政策での敗北」を政策で取り返す戦略を説く。

小田玄紀小田玄紀内藤 瑠那内藤 瑠那
公開 2026.07.13更新 -

※本記事は小田玄紀さんのnote記事「日本を「経営」する:GDP1000兆円への再起動計画(③半導体・生成AIなど最先端産業)」を許諾を得て再掲載したものです。本文は原文のまま、見出しのみ編集部で再構成しています。

出典:https://note.com/genkioda/n/nb89951459568

小田玄紀です

これまで日本経済・財政のための考え方として、①骨子と②エネルギーについて考察をしてきました。

今回は半導体・生成AIなど最先端産業についての考察を整理していきます。

まず、日本経済を再生させるにあたり、本来であれば「強みを伸ばす」ことに特化した方が良く、その意味では半導体・生成AIについては既に他国がかなりリードをしている状況なので、『今から日本がやっても勝てないのではないか』という意見もあることは事実です。

ただ、このような意見は受け止めつつも、日本がこれから経済・財政を再生させるために半導体・生成AIを含めた最先端分野への投資及び事業開発は不可欠です。そして、適切な政策及び事業連携を行うことで今からでも十分に対応が可能です。

私も3年程前に、海外から半導体事業を誘致することに携わっていた経験もあり、ある程度は内部事情や実態も理解している身として、今回の考察を整理していきます。

シェア50%から数%へ。日米半導体協定が残した傷

日本の半導体市場シェアの推移(1988年の世界シェア50%超から数%台へ)

まず、一般的な市場状況の確認ですが、半導体はかつては「日本がシェアのトップを占めており、市場全体の50%が日本企業」でした。それが日米貿易摩擦を生じ、「日米半導体協定」が交わされることになりました。この結果として、日本が外国産半導体を一定以上調達することが義務化され、一気に日本の半導体市場は衰退しました。この時に台湾や韓国に多くの技術者及び技術基盤が流出することになります。

今は日本の半導体シェアは数%台になり、5兆円程度の国内生産規模となりました。

「政策での負けを政策で再び勝ちに行く」という思いもあり、再びここ数年、経済産業省を中心に半導体政策が掲げられるようになりました。

半導体の重要性(あらゆる産業・生活とDXを支える基幹部品)

これは半導体産業のためだけではなく、半導体は全ての産業・生活に必要不可欠な資源であり、半導体生産基盤を国内で保有することが経済安全保障の観点からも重要性を持つために、このような政策判断となりました。

この政策のもとで、北海道のラピダスや九州のTSMC(正確にはSONYとの合弁のJASM)や広島のマイクロンなどへの補助金支援により誘致を含めた事業支援が進むようになりました。

「ロジック」と「メモリ」は別物。半導体産業を正確に読む

なお、半導体産業は「半導体」と1つの言葉で表現するとミスリードするくらい、極めて多くの業種・業態から成り立っています。

まず、大きく「ロジック半導体」と「メモリ半導体」では位置付けが異なります。演算処理をするのがロジックで記憶をするのがメモリなのですが、同じ半導体企業でもこのロジックとメモリは全くの別物です。

たとえば、台湾のTSMCは最先端のロジック半導体のファウンドリ(メーカー)です。北海道のラピダスも同様にロジック半導体です。

他方で半導体製品はロジック半導体だけだと機能せず、メモリ半導体も必要になります。また、メモリも最先端メモリ(HBM)と通常のメモリは全くその位置付けが変わってきます。

たとえば最近はキオクシアが非常に業績が上がり、株式市場でも注目されましたが、キオクシアはメモリのファウンドリですが、最先端メモリ(HBM)ではありません。半導体市場をみていると、メモリ市場は数年サイクルで大きな上げ・下げがあり、今は需要高騰期ということもあり非常に高値で取引がされています。しかし、需給調整が難しい市場でもあり、一気に在庫を抱えてしまい数年後には悪い決算となる企業がほとんどです。

他方でHBMはまだ歴史こそ浅いものの、生成AIにおいてHBMは必要不可欠なパーツとなっています。そして、このHBMにおいて最も高品質な製品を生産できるとされるのが韓国のSKハイニックスです。

数年前まではNVIDIAの半導体製品において、メモリはSKハイニックスのHBMしか認められていませんでした。しかし、需要に対して供給が追い付かず、また、他社も製品水準が上がってきたこともあり、去年から韓国のサムスンおよび米国のマイクロンもHBMも採用されるようになりましたが、それでもまだ需要に対して供給が追い付いていない状況です。

日本ではメモリ分野においては広島のマイクロンに対して日本政府が支援をしていますが、それでもHBMはこれからますます重要性が出てきます。TSMCとラピダスといった最先端のロジック半導体を誘致することが出来た今、必要なことはHBMの国内生産拠点を創ることが重要です。

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小田玄紀
日本経済財政再生機構 / Remixpoint創業者
小田玄紀

「頑張る人が報われる」社会を創るために、2001年東京大学在籍時に起業。2002年から日本で社会起業家の概念を啓蒙し、社会起業家支援セクターの立上げを行う。2011年東日本大震災を契機に事業再生に従事。株式会社リミックスポイントの経営に参画し、同社の時価総額を4億円から6年で250倍の1000億円にする。2018年紺綬褒章受章。2019年世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会理事、一般社団法人日本暗号資産取引業協会理事、一般社団法人日本デジタル空間経済連盟理事。2026年5月にシンクタンク「日本経済財政再生機構」を設立。

内藤 瑠那
編集長
内藤 瑠那

青山学院大学経済学部卒業後、美容系専門商社、カカクコムを経て独立。メディア立ち上げ、インタビュー取材、SNS運用、コンテンツディレクション、Webマーケティングまで幅広く経験。「宣伝会議 編集・ライター養成講座」第49期最優秀賞受賞。DEEPPOINTでは、編集方針の設計、取材企画、記事制作、SNS発信を統括する。