※本記事は小田玄紀さんのnote記事「日本を「経営」する:GDP1000兆円への再起動計画(②エネルギー)」を許諾を得て再掲載したものです。本文は原文のまま、見出しのみ編集部で再構成しています。
出典:https://note.com/genkioda/n/n63cf82a628cb
求められる4条件と「全ての選択肢を当たる」方針
これまでエネルギー市場について、その構造や複雑な料金体系についての説明をしてきました。改めて、今の日本に求められるエネルギー政策は以下になります。
①大規模な発電設備の新設または再稼働 ②発電単価9~15円/kWh(できれば8~10円/kWh)での電源調達 ③日本国内での発電設備の展開 ④出来ればクリーンエネルギー(カーボンフリー電源)
これらは30兆円を超える年間エネルギー赤字の解消、電気代高騰の抑制、日本における最先端産業の誘致・育成、防衛・レジリエンスの観点からも最重要事項となります。
やるべきことは明確なので、後はこれをどのように実現していくのかが重要です。また、何か特定の解決策に依存してしまうと、その解決策が実現できなくなった際に取り返しが付かなくなるので、『取り得る選択肢は全てあたっていく』という方針が求められてきます。
先に説明をした、ペロブスカイト太陽光も有力な候補の1つですし、系統用蓄電池も重要な解決策の1つです。それ以外に重要な解決策の1つとなり得るのが核融合発電です。

「核分裂」と「核融合」は別物——日本が持つ研究優位
ここ数年の電気料金高騰を踏まえて、改めて核発電についても冷静な評価がされつつあるようになっていますが、それでも東日本大震災の事故もあったため、核についての不安は一定程度残ってしまっている現実があるかもしれません。
しかし、同じ「核」という言葉が使われているものの、核分裂と核融合は性質が異なるものです。
また、日本は核融合の研究開発は実は他国に比べて進んでいます。

核融合にはトカマク型、ヘリカル型、レーザー式などの発電方法があげられます。ITERなど世界の主流研究はトカマク型が主流となっていますが、日本ではヘリカル型やレーザー式も進んでいます。
それぞれの形式によってメリット/デメリットの一長一短はありますが、トカマク型に比べてヘリカル型は実用化は困難なものの連続運転(定常稼働)の容易さが評価されています。日本では核融合科学研究所において25年以上の研究がされており、一部の実証実験では成果が上がっています。
2年程前に政府内でも核融合の重要性が再度認識され、核融合を日本政府としても支援していく方針が明記されました。5年間で数千億円規模の予算が投下されることになり、2030年代の実現に目指して動いていくこととなっていますが、核融合をはじめとした最先端エネルギーについてはより大きなアクセルを踏んで実用化に向けたアクションに繋げても良いのではないかと考えています。
というのも、実際に現状において毎年30兆円以上のエネルギー赤字を日本は生んでしまっています。また、電気料金はこの15年で18円/kWhから32~36円/kWhと倍近い負担になってしまっており、日本全体の電力市場は18兆円から30兆円に膨れ上がっています。
この現実を踏まえたら、毎年2~3兆円近いエネルギー開発投資をしたとしても、中長期で見れば十分に投資回収が出来る水準です。また、これを国庫負担だけで賄うのではなく、容量市場にて毎年1.4~2.2兆円規模の国民負担が生じるのであれば、まさに電源開発は容量市場の趣旨なので、この容量市場負担金からも最先端エネルギーの開発に一定額を回すようにするべきだと考えます。
海外各国でも核融合の実用化に向けた研究開発は進んでいます。しかし、アメリカはLNGなど天然資源もある中で、核融合に対する投資はそこまでフォーカス出来ないという政治的事情もあります。中国もITERへの支援などを含めて力を入れていますが、日本はITERなどのトカマク型に加えてヘリカル型やレーザー式など多様な核融合発電方法の研究がされており、一定の実証もされています。
資源の無い日本だからこそ、ここは年間数百億円~数千億円という中途半端な金額ではなく、数兆円規模の研究開発投資に踏み切るべきです。現状で30兆円以上のエネルギー赤字があるという事実、また、電力市場がこの15年間で15兆円以上も上がり国民負担が増えているという事実からも、この点は政治判断で取り組むべきテーマだと思います。まさに、この判断こそが「管理部的運営」から「CFO的経営判断」への転換の1つです。
日本で早期に核融合発電の実績をつくり、当該特許とノウハウを米国・中国などに輸出することが出来るようになれば、日本の政治的地位も上がりますし、日本がエネルギー輸入国からエネルギー輸出国になれる可能性もあります。それほど重要な政策になると考えています。
原発再稼働プロセスの「不文律」を見直す
また、原子力発電所についても、改めて現状において再稼働におけるプロセスの再設計は必要だと考えています。現在、原子力発電施設の新設および再稼働については、原子力規制委員会の承認および地元自治体の同意が必要とされています。
もちろん、東日本大震災の事故が起こった教訓から学ぶべきことは多くあり、安全性の確保が最重要事項であることは変わりありません。ただし、安全性の確保と日本全体の経済・財政問題は同様に重要な点であるため、改めて、原子力発電の新設・再稼働についてのプロセス見直しについてはエネルギー基本計画の見直しと共に行われるべきです。
まず、法律改正や布令改正を伴わなくても実施できる事項として、原子力発電所の再稼働の方法の見直しがあげられます。実は原子力発電所の再稼働において、地元自治体の同意というのは法律上の要件ではありません。あくまでも商習慣として、電力会社が地元自治体の事前了解を得るという不文律があり、これが遵守されているのみです。
地元自治体への説明は重要な点ですが、現在はこれが過度な負担にもなっています。地元自治体の首長からしても、自分が肯定することで政治的リスクを負うという判断から慎重な判断をせざるを得ない場面も出てきます。
そもそも、法律でも求められていないことであれば、この点は見直すことは十分に考えられるのではないでしょうか。また、原子力規制委員会についても、現在のようにリスクや危険性を第三者目線で評価・分析をすることは続けるべきだと思いますが、原子力規制委員会の承認を前提として新設・再稼働を認めていくという体制については再考が求められるべきではないでしょうか。
何事にも、一定のリスクを踏まえた判断が必要となります。それぞれの政策を判断するにはメリットとデメリットを比較して判断をしていく必要があります。特にエネルギー問題は日本の国策において最重要な事項の1つですので、これは政治的判断が求められる場面もあります。
日本経済・財政を再生させるという観点で、エネルギー政策は最重要事項であり、全ての前提となるため、抜本的な再設計・再評価が必要になってきます。
昨年改定された第7次エネルギー基本計画においても、大きな方向性は示されました。私もこの方向性については賛成です。ただ、現時点だとここに示された内容を実現するにはまだいくつか大きな壁があるため、このNoteに日本のエネルギー問題について包括的に整理をしてみまし。
これから、多くの人と一緒にあるべき姿とその実現のためのアクションプランを考えてみたいと思います。
2026年5月10日 小田玄紀


