加藤 大輝(かとう だいき)/ 加藤軽金属株式会社 代表取締役社長・3代目
1946年創業、窓枠のサッシや車のバンパーなどを手がけるアルミ加工会社の3代目。株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア)出身のビジネスパーソンとして活躍後、2020年に家業へ。今はアルミとディープテックをつなぐことをテーマに、量子ドット技術を持つ企業のM&Aなど、中小企業ならではのディープテック支援を進めている。
- 新しいJIS合金ができないほど「成熟」したアルミ産業の現在地
- 量子ドット企業のM&Aなど、中小企業ならではのディープテック支援のかたち
- 「中小企業がPoCを回し、大企業が広める」二段階の社会実装論
窓枠から車のバンパーまで。1946年創業のアルミ屋の3代目

まず、会社について簡単に教えてください。
元々は、窓枠のサッシだったり、車のバンパーだったり、ホワイトボードの下の粉受けみたいな、そういったところを50mぐらいアルミでピューって作って、それをぶつ切りに切断して、加工して組み立てをする、そんなことをやってる会社です。1946年創業で。


かなり歴史がありますね。ご自身は承継された立場だと伺いました。
そうですね、私は家業を継いで、今3代目になります。元々は何社かを経ていて、インテリジェンスの「i-common」という事業で、専門家人材の紹介を通じて、企業の経営支援や新規事業支援をやっていたんです。その中で、中小企業の立て直し支援を銀行さんと一緒にやり始めた時に、うちの会社が候補として上がってきてしまって。見たら、全然立て直せないレベルの真っ赤っかで。それで戻ったのが2020年です。
正直、スーパーリスクでしたよ(笑)。ただ、事業部長から『ダメだったら戻ってこいよ』って言ってもらえていたので、それで安心してやって。2年間は僕も赤字を出しちゃったんですけど、3年目から黒字になって、債務超過も返しました。

「新しいJIS合金ができない」成熟産業を、ディープテックで破る

そこから今、ディープテックに事業を寄せていっているんですね。
そうです。もうアルミって、新しいJIS合金が全然できないぐらい成熟しちゃってるんですよ。ここを打ち破って、日本のアルミ産業がちゃんと利益が出るような状態にするには、ディープテックの力を借りて技術的な革新を起こさなきゃいけないと思っていて。今、アルミとディープテックをなんとかつなげようと頑張っています。
軽いし、熱伝導もいいし、電気を通しやすいという特性もまあまあいい。そこを活かしながら新しい技術と組み合わせると、また化けていくんです。今やっているのはエネルギー領域と、細かいミクロ・マイクロの領域。僕がやっている放熱塗工もこの領域で、放熱性をアルミなら10倍くらいにできるんです。

量子ドット企業を「事業承継に近いM&A」で引き継ぐ

最近、実際にM&Aもされたと伺いました。
はい、量子ドット(クォンタムドット)と呼ばれる、めちゃくちゃ細かい粒子を取り扱う会社を買いました。これを使うと、太陽光の発電素子の発電効率が、今20%ぐらいのものが35%くらいまで上がる。ほぼ2倍です。もっとうまく作れば40%にもなる技術がある。そこにアルミも意外と使うんですよ。電極だったり、フィルム状にするときのものだったり、受け皿だったり。
ある知り合いの社長から、僕が勝手に恩師と仰ぐ方を紹介してもらって。その方が持っていた会社で、もういいというタイミングだったので、引き継がせていただいた形です。事業承継に近いM&Aですね。

中小企業こそ、ディープテックの受け皿になれる

中小企業がディープテックの受け皿になる、という考え方が印象的でした。
ディープテックって、領域がめちゃくちゃ長いんですよ。一人で完成できない可能性が結構高くて。だから誰かがどんどん引き継いでいくことが大事だし、それを大手企業が赤字を垂れ流しながらライフワーク的に面倒を見られるかというと、僕は見れないと思っているんです。時間があって、ある程度資金的に余裕がある会社が、そのディープテックの面倒を見て、自社のプロダクトに掛け合わせて世の中に出していく。それが相性がいい。中小企業の社長は、株主とか関係なく意思決定できるので。
ただ、ディープテックは爆発的な革新的技術だと思っています。最後に広げようとするときは絶対に大企業の力が必要です。でも大企業がそれを育てながら世の中に役立つ形に盛っていけるかというと、そうじゃないと思う。お金もかかりますし。中小企業がプロダクトを作って、ある程度PoCを回した状態で、大企業が受け入れやすい形にして盛っていく。それを大企業が広める。この二段階をディープテックは取らなきゃいけないと思っています。

資金調達は「持ってき方次第」

資金調達についてはどう考えていますか。
持ってき方次第です。自分たちが大企業の代わりをやる文脈なら資金調達は必要ですが、そうでなければ、ある程度自分たちの中でやれます。資金調達がかなりいる領域は会社をスピンアウトさせて調達を促しますが、そこまでいらないところは自分たちのデッドの範囲内でやります。ディープテックベンチャーと組む場合は、そちら側に調達してもらえばいい。何とでもなる感じですね。

壁を何枚も乗り越えた先に、社会実装がある

加藤さんにとって、ディープテックとは?
技術革新だと思っています。もしくは、社会実装するのに何枚も壁がある技術。壁がないものだったら、ただのテックだし、ミドルテックぐらいで終わっちゃう。壁がいっぱいあるものが、僕からするとディープテックだなと。その壁を、中小企業と組んだほうがいいのか、大企業が興味を持ってやりたいなら大企業と組めばいいのか、いろんなやり方がある。その壁を何枚も乗り越えた先に、ディープテックが社会実装されてる世界があるのかなと思っています。


最後に、どんな相手と組みたいですか。
金属系に進出したいけど、どう進出したらいいか分からない企業さんと組みたいです。あとは、自分たちの技術をどこに持っていったらいいか分からないと思っているベンチャーさんとも組みたいし、支援したい。困っていたらぜひ、とりあえず連絡してください!

取材:Kyohei/文:DEEPPOINT編集部/取材日:2026年6月


