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連載「日本を経営する第四回

【第4回】容量市場の「サイレント値上げ」と系統用蓄電池が開いた扉

【第4回】容量市場の「サイレント値上げ」と系統用蓄電池が開いた扉

2024年度1.46兆円、2029年には2.2兆円超。請求書に明示されないまま基本料金に上乗せされる容量市場負担金という「サイレント値上げ」の制度設計問題と、その副産物として生まれたIRR10〜15%・3〜6兆円規模の系統用蓄電池市場を考察する。

小田玄紀小田玄紀内藤 瑠那内藤 瑠那
公開 2026.07.13更新 -

※本記事は小田玄紀さんのnote記事「日本を「経営」する:GDP1000兆円への再起動計画(②エネルギー)」を許諾を得て再掲載したものです。本文は原文のまま、見出しのみ編集部で再構成しています。

出典:https://note.com/genkioda/n/n63cf82a628cb

「趣旨には賛成」でも規模が問題。容量市場の設計ミス

電気料金の構造は非常に複雑ということを、これまでに説明してきました。そして、ここ数年でさらにそれを複雑にして、また、実質的な電気料金値上げに繋がる政策が導入されています。それが『容量市場』の導入です。

冒頭の章で触れたように、日本はこの数年で「電気は余る」という状態から「電気は足りない」という前提に大転換しました。また、太陽光発電など再エネの普及により需要のピーク時には発電がされるので、ピーク時電源は足りています。

今、日本に不足しているのは常時電源(ベースロード電源)であり、また、今後の最先端産業である半導体や生成AIデータセンターなどは24時間稼働を前提とするので、この常時電源の底上げが必須となります。

このような課題認識を背景として、日本全体として電源供給力を高める必要性があるとの理由から、容量市場の導入が提起されるようになりました。私もこの趣旨には賛成でした。まさに日本にとって必要な政策だと思います。

他方で、問題はその規模です。2024年度の容量市場負担金の総額は1兆4650億円となりました。そして、この規模は2029年には2兆2000億円を超えるとされています。

現在、再エネ賦課金が3.2兆円であり、これはkWhあたり4.12円と請求書に明記されて需要家負担となります。他方で容量市場負担金は再エネ賦課金の50~70%近い負担額になるのですが、需要家には負担額が明示されずに電気の基本料金の値上げという形でサイレントに請求されることになります。

これは容量市場の制度設計がされた際に、政治家・メディアもあまりこの点を重要視しておらず、また、事業者側にも容量市場負担金の総額が知らされたのが事後であったために多くの事業者も設計当時は問題視をしていなかったという現実があります。

容量市場の制度が導入される際に、当時は「容量市場負担金は小売電力事業者に対してその規模によって課される」という説明がされていました。小売電気事業者としても、日本全体の電力供給体制増強は必要なことであり、電力価格の安定に繋がるのであれば、政策として合理性があるという判断をその段階ではしていました。

しかし、その市場規模すなわち負担金が全体で1~2兆円規模になる可能性があるということが事後に明らかになり、自体は大きく変わりました。当時、日本国内の電力市場は16~18兆円程度でした。小売電気事業者の利益率は3~5%程度が相場なので、4800~9000億円程度が事業者全体の利益になります。

そのため、容量市場の負担額が500~1000億円程度であれば、なんとか事業者利益を削って対応が出来るのではないかという考えを有していましたが、蓋を開けてみるとその負担額が1~2兆円という事業者全体の利益を超える金額であることが明らかになりました。

これは事業者側で吸収することは不可能なので、需要家に対して転嫁する必要があります。しかし、元々が需要家に対する請求ではなく、小売電気事業者に対する請求という趣旨で制度設計がされており、また、再エネ賦課金のように使用量のkWhではなく契約容量(kW)に対して課金されるために需要家に対して一律いくらの負担かということが分かりにくい設計となっています。

このような金額算定の複雑性もあることから、容量市場については需要家に対して与える影響は大きいものの、この制度設計の問題点についてはあまり正しく理解されていません。

先の燃料調整費と同様に、電気料金の計算が複雑すぎるため、多くの人は理解ができず、何が課題なのかを正しく把握することが困難になっているという現実があります。

この容量市場については、改めて制度設計の見直し、少なくても需要家に対して一定以上の負担がされているという事実を踏まえるともう少し分かりやすい説明責任が果たされるようにしていくべきだと考えていますが、1つ容量市場に関連して、日本全体で系統用蓄電池についての市場形成が進んだことは大きな意義があると考えています。

補助金ゼロで民間3〜6兆円が動く?系統用蓄電池市場の誕生

系統用蓄電池については昨年12月にnoteにまとめているので、そちらを確認頂ければと思いますが、日本全体として、電気は余っている時間と不足している時間があります。容量市場の概念はベースロード電源の確保に端を発していますが、これは新規発電設備の建設に加えて蓄電池の整備・普及によっても実現可能です。

家庭用蓄電池や産業用蓄電池ではなく、電力系統自体の大規模蓄電池は海外ではその導入が進んできましたが、日本では市場整備がされてきませんでした。他方で、別途JEPXの価格チャートにても示したように、電気代のボラティリティは非常に高く、余っている時は0.1円/kWh程度で売買がされており、高い時は10~20円/kWhで取引がされます。つまり、安い時に電気を調達することができれば、高い経済合理性を期待できます。

この市場が整備され、また、これは再エネのような固定価格買取ではなく市場原理での価格形成がされる市場となりましたが、現在は系統用蓄電池のIRR(想定投資利回り)は年間10~15%が期待され、3~6兆円規模の投資資金が入ってくる市場になっています。

この市場が形成されたことは非常に大きな意義があり、まさに適切な政策が施行されれば、政府が補助金や予算を投下せずとも民間資金で市場が自発的に形成される好事例だと考えています。容量市場が副産物としてこの市場を生んだことは評価されます。ただ、容量市場自体には制度設計に課題があるので、この見直しについては改めての検討が必要だと思います。

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小田玄紀
日本経済財政再生機構 / Remixpoint創業者
小田玄紀

「頑張る人が報われる」社会を創るために、2001年東京大学在籍時に起業。2002年から日本で社会起業家の概念を啓蒙し、社会起業家支援セクターの立上げを行う。2011年東日本大震災を契機に事業再生に従事。株式会社リミックスポイントの経営に参画し、同社の時価総額を4億円から6年で250倍の1000億円にする。2018年紺綬褒章受章。2019年世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会理事、一般社団法人日本暗号資産取引業協会理事、一般社団法人日本デジタル空間経済連盟理事。2026年5月にシンクタンク「日本経済財政再生機構」を設立。

内藤 瑠那
編集長
内藤 瑠那

青山学院大学経済学部卒業後、美容系専門商社、カカクコムを経て独立。メディア立ち上げ、インタビュー取材、SNS運用、コンテンツディレクション、Webマーケティングまで幅広く経験。「宣伝会議 編集・ライター養成講座」第49期最優秀賞受賞。DEEPPOINTでは、編集方針の設計、取材企画、記事制作、SNS発信を統括する。