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連載「日本を経営する第七回

【第7回】「前工程」だけでは終わらない——後工程と産業生態系の完成

【第7回】「前工程」だけでは終わらない——後工程と産業生態系の完成

ファウンドリを誘致しても、後工程がなければ「半導体製品」は完成しない。数百億〜数千億円で誘致でき地方創生にも波及する後工程拠点、パーツで世界シェアを握る日本の強み、そして次の10年を変えるエッジ半導体——半導体生態系の完成形を描く。

小田玄紀小田玄紀内藤 瑠那内藤 瑠那
公開 2026.07.13更新 -

※本記事は小田玄紀さんのnote記事「日本を「経営」する:GDP1000兆円への再起動計画(③半導体・生成AIなど最先端産業)」を許諾を得て再掲載したものです。本文は原文のまま、見出しのみ編集部で再構成しています。

出典:https://note.com/genkioda/n/nb89951459568

ファウンドリで作っても「製品」にならない。後工程の重要性

また、もう1つ重要なことは半導体生産のプロセスなのですが、TSMCやラピダス、SKハイニックスなどで生産されるものは「半導体製品」ではありません。あくまでも半導体製品の頭脳のようなものです。これを加工して製品化していく必要があります。

そのため、TSMCなどの工場(ファウンドリ)のことを「前工程」といいます。ここで作られたものを「中工程」または「後工程」の工場で半導体製品化していきます。

この後工程も極めて重要な位置付けをもっており、現在は台湾・中国・アメリカ・アジア諸国でこの後工程が行われています。ただ、この後工程は製品化率が極めて低く、最先端半導体などであれば実際の歩留まり率はかなり低い値になります。この後工程を日本に誘致してくることが半導体産業を事業生態系として発展させていくために必要なことになります。

いくらファウンドリ工場を国内に誘致したとしても、それを半導体製品にするために海外工場にロジック/メモリを持っていく必要があるのであれば、それは半導体製品を完成させたことにはなりません。

日本の技術力や教育水準を考えた場合、他国に比べても優位性のある後工程産業が創出できると思います。また、地政学リスクを考えた場合でも日本で半導体ファウンドリだけでなく、後工程拠点を日本に構えることは、台湾や韓国からしても合理性があります。

少なくとも現状においては半導体製品は中国向けと中国以外向け(欧米等)を明確に分けた生産ラインの立ち上げが求められており、特に欧米向けの後工程拠点として日本産であることは大きなアドバンテージになります。

ファウンドリの場合は、建設費用が数兆円規模になってしまうため、巨額の政府支援が不可欠になりますが、後工程の場合は数百億円~数千億円程度なので、政府補助も重要ですが、サプライチェーンおよび産業基盤(インフラ、人材など)が整えば、そこに産業集積されますので、今後、地方創生の観点からも国内に複数の半導体後工程拠点を構えることは意味があります。

パーツで世界シェアを持つ日本

半導体製造装置の分野別シェア(日本企業の強み領域)

半導体素材市場の売上高シェア(2021年、多くの品目で日本企業が上位)

また、半導体の製造製品や素材において、日本は特定の分野では一定のシェアを有しており、半導体製品をつくる上で日本企業の協力は欠かせません。

かつては日本が世界の半導体シェアの50%以上を有していたこと、また、現在も半導体生産におけるパーツは日本企業が重要な役割を果たしていることから、改めて、「ロジック半導体および最先端メモリ」および「前工程に加えて後工程」を意識した総合的な半導体政策を強化していくことが、日本経済・財政を再生させるために大きな意味をもたらします。

なお、SKグループの時価総額は100兆円を超えており、サムスングループは200兆円、TSMCは300兆円を超えています。残念ながら日本企業で時価総額100兆円を超えている企業は1社もありません(2025年末時点ではトヨタ自動車が時価総額日本最大で53兆円でした)。

改めて、「政策」こそが「国家の経営戦略」であり、これが経済及び財政に与える影響がどれだけ大きいかを半導体産業からも理解できます。

次の10年を変える「エッジ半導体」という視点

なお、半導体は生成AIにも大きく影響をしてきます。これは短期的には生成AIのデータセンターには最先端半導体が必要になるためですが、これから数年の間に、最先端半導体はさらに大きな意味を持ってきます。それがエッジ半導体です。

これまでの生成AIは主にアプリなどを介して、サーバーに情報を照会して回答されるものとなっています。5Gがこれからさらに回線が進化し、また、データセンター容量が巨大化することで、これまで以上に既存の生成AIも進化を遂げていきますが、これを超える役割を担うのがエッジ半導体です。

エッジ半導体は端末に組み込まれる半導体です。たとえば、携帯電話に翻訳専用のエッジ半導体が搭載されることで、瞬時に翻訳がされ、電波も必要としません。特定の機能を持った最先端エッジ半導体が搭載されていくことで、ロボットや携帯端末(携帯電話、ウェアラブルグラスなど)の進化は劇的に変化します。

これから10年程度でこうした製品がどんどん実用化されていきますので、最先端半導体の需要は益々高まります。なので、現在日本政府が半導体産業に対して10兆円規模の補助金を拠出することを含めて、包括的な半導体政策を推進していますが、これはむしろより規模を増やし、スピードを早め、大事なことは先に書いたような総合的な半導体生態系を創出することを意識して展開をしていくことになります。

日本の経常収支の推移(参考:モノとサービスは赤字、金融で稼ぐ構造)

以前にも紹介しましたが、日本全体の経常収支は30兆円以上の黒字となっています。これは第一次所得収支が支えていますが、つまり、日本の経済活動から国内から海外に移転してしまったことが、日本の企業・民間は潤っていても国家としては赤字になってしまっている最大の要因です。

日本に国際競争力のある産業基盤を回帰させること、これこそが日本経済・財政再生のための最重要事項であり、その中でも半導体産業はありとあらゆる産業の基盤となるため、国家全体として取り組むべきテーマになります。

そして、これを実現するためにも、現在は日本はエネルギーインフラが弱いため、先回書いたように、エネルギー政策の包括的再設計が必要になってくるのです。

次回は③長寿化について考えていきます。これは労働力の確保という観点に加え、社会保障費の抑制という問題にも大きく関わってくるテーマです。

2026年5月22日 小田玄紀

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小田玄紀
日本経済財政再生機構 / Remixpoint創業者
小田玄紀

「頑張る人が報われる」社会を創るために、2001年東京大学在籍時に起業。2002年から日本で社会起業家の概念を啓蒙し、社会起業家支援セクターの立上げを行う。2011年東日本大震災を契機に事業再生に従事。株式会社リミックスポイントの経営に参画し、同社の時価総額を4億円から6年で250倍の1000億円にする。2018年紺綬褒章受章。2019年世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会理事、一般社団法人日本暗号資産取引業協会理事、一般社団法人日本デジタル空間経済連盟理事。2026年5月にシンクタンク「日本経済財政再生機構」を設立。

内藤 瑠那
編集長
内藤 瑠那

青山学院大学経済学部卒業後、美容系専門商社、カカクコムを経て独立。メディア立ち上げ、インタビュー取材、SNS運用、コンテンツディレクション、Webマーケティングまで幅広く経験。「宣伝会議 編集・ライター養成講座」第49期最優秀賞受賞。DEEPPOINTでは、編集方針の設計、取材企画、記事制作、SNS発信を統括する。