DEEPPOINTDEEPPOINT

2026年の需給調整市場はどう変わる? 系統用蓄電池事業への影響と対策

2026年の需給調整市場はどう変わる? 系統用蓄電池事業への影響と対策

需給調整市場における一次調整力の上限価格が、当初想定の7.21円を覆してΔkWあたり15円で検討されるなど、市場は大きな転換期を迎えている。上限価格引き上げの背景、前日取引化に伴う募集量の削減、EPRXの法的位置付け、取引手数料の倍増まで、2026年度の制度変更の全貌と系統用蓄電池事業への影響を整理する。

DEEPPOINT編集部DEEPPOINT編集部
公開 2026.07.09更新 -

※本記事は、株式会社シールエンジニアリング 取締役・菊地潤(きくち・じゅん)氏による解説動画の内容を、DEEPPOINT編集部が文字起こし・再構成したものです。制度の詳細には検討段階のものを含みます。情報・発言内容は動画収録時点のものです。

「2026年も系統蓄電事業はまだまだ熱い!」 需給調整市場における一次調整力の上限価格が、当初の想定を覆してΔ15円/kWで検討されるなど、市場は大きな転換期を迎えているんです。本記事では、大幅な価格引き上げの背景や、前日取引化に伴う募集量の削減といった制度変更の全貌を整理していきます。市場変化を生き抜き、収益を最大化するために欠かせないアグリゲーター選びの要点までお話ししますね。

上限価格は7.21円から15円へ。2026年も系統蓄電事業は「熱い」

まずお伝えしたいのは、予想外だった上限価格の設定についてです。 2025年12月の時点では、需給調整市場の一次調整力に上限が設けられること、そしてその水準としてΔkWあたり7.21円という数字を前提に、それでも系統蓄電事業の収益性はある程度担保されるとリミチャンネルでご説明していました。 ところが現在、資源エネルギー庁の委員会での検討を経て、上限はΔkWあたり15円で進む見込みとなっているんです。ほぼこの価格で確定するとみています。つまり、2026年もまだまだ系統蓄電事業は熱い、ということですね。 ただし、この15円も市場を評価しながら段階的に見直される想定で、今後10円、あるいは7.2円へと引き下げられる可能性も示されています。

上限価格の見直し(7.21円→15円)の推移

<上限価格の見直しの推移(動画より)>

募集量は約3分の1へ。「前日取引化」で市場はこう変わる

今回の核心は、2026年3月の前日取引化に合わせて調整力の調達コスト高騰を防ぐための「募集量の削減」と、「上限価格の引き上げ(7.21円→15円)」ですね。 まず募集量は引き下げられ、およそ3分の1程度になります。さらに、これまで週1回だった入札が前日取引へと移行するなど、2026年度は調整力市場そのものが大きく変わるんです。 募集量を削減する狙いは、市場原理を働かせることにあります。募集量に対して余力が少ないと、入札はすべて約定してしまい、参加者があえて安く札を入れる必要がなくなってしまう。結果として上限価格に「張り付く」状態が起きてしまうんですよ。募集量を下げて余力を持たせれば、安い順から落札されるようになり、市場に流動性が生まれます。これは三次調整力や二次調整力など、他の調整力の流動性を促すための価格調整とも捉えられますね。 なお募集量は1ヶ月から半年のスパンでモニタリングされ、状況に応じて価格や募集量そのものを柔軟に見直す(増やす)ことも検討されているとのことです。

募集量削減(約1/3)と前日取引化のイメージ

<募集量削減と前日取引化のイメージ(動画より)>

取引所「EPRX」に法的位置付け。ガバナンス強化へ

もう一つの大きなポイントが、需給調整市場の取引所である「EPRX」に法的な位置づけを与える検討ですね。運営の健全性・透明性・中立性を担保するため、運営主体に運営報告を義務付けるなど、ガバナンスを効かせるための法律上の措置が検討されています。

システム改修で手数料は倍増。適用は2026年3月14日から

制度変更に伴い、市場の大規模なシステム改修が行われます。週間取引から前日取引への移行などにより、システム改修費は約33.5億円の増加が見込まれているんです。 これを受けて、これまでΔkWあたり0.03円だった取引手数料は、2倍の0.06円へと引き上げられます。これらの制度変更は、2026年3月14日の受け渡し分から適用される予定ですね。

システム改修費・手数料改定・適用日のまとめ

<システム改修費(約33.5億円)・手数料改定(0.03円→0.06円)のまとめ(動画より)>

系統用蓄電池事業への影響と、アグリゲーター選びの重要性

では、これがリミックスにどのような影響を与えるのか。 以前、日本蓄電池さんとプレス発表した「系統用蓄電池7ヶ所の共同投資事業提携」の収益は、もともと一次調整力を7.21円として試算していました。これがΔkWあたり15円で計算できるようになれば、収益性は大きく上振れし、かなり向上することになるんです。 とはいえ、募集量が減ることで入札価格の変動も激しくなります。そこは注視しながら運用を見ていきたいと思っています。 今後の市場では、アグリゲーターによる市場予測・発電予測・需要予測の精度が、収益に極めて大きな影響を及ぼしますからね。実際に系統用蓄電池を運用し、市場取引を行うのはアグリゲーターなんです。2026年度からは、「とりあえず高い上限価格で入札して張り付かせる」といった単純な手法は通用しなくなります。だからこそ、どのアグリゲーターを選ぶかが極めて重要になり、慎重な選定が求められるんですよ。

まとめ:2026年度・需給調整市場の変更点3つ

  1. 募集量の減少と上限価格の引き上げ:前日取引化への移行に伴い募集量が減少。上限価格は7.21円からΔkWあたり15円へと大幅に見直される。
  2. EPRXの法的位置付けの明確化:運営主体にガバナンスを求める法律上の措置が検討されている。
  3. 取引手数料の倍増:0.03円から0.06円へ。

いずれも検討段階を含みますが、2026年度の需給調整市場の方向性として押さえておきたいポイントですね。

用語解説

需給調整市場/一次調整力:電力の需要と供給のバランス(周波数)を一致させるために必要な「調整力(予備の電力)」を取引する市場。なかでも一次調整力は、周波数の変動に対して数秒以内に自動で応答・調整する、最もシビアな調整力を指します。

上限価格の「張り付き」:募集量に対して入札量(余力)が少ない場合、参加者が安く入札する動機を失い、制度上の上限価格(今回でいえば15円)での落札が常態化してしまう現象のことです。

前日取引化:これまで「週間」単位で行われていた調整力の入札・調達を、受渡日の「前日」に行うようにする制度変更。より精度の高い予測に基づく効率的な電力運用が可能になります。

アグリゲーター:複数の発電設備・蓄電池・需要家の電力リソースをIoTで束ね(アグリゲートし)、ひとつの発電所のように機能させて市場取引などを代行する事業者。今後の市場では、その予測・入札スキルが収益に直結します。

EPRX(電力需給調整力取引所):日本における調整力の調達・取引を行うためのプラットフォーム(運営主体)。今後、法的な位置づけが明確化され、透明性の高い市場運営が求められるようになります。

編集:DEEPPOINT編集部/出典:リミちゃんねる(株式会社リミックスポイント)

japananalysis

関連記事

DEEPPOINT編集部
編集部
DEEPPOINT編集部

DEEPPOINT編集部が制作した記事です。ディープテック各分野の市場解説から、暗号資産・証券・DATなど投資関連サービスの比較・解説まで、編集部の調査に基づいてお届けします。