※本記事は、株式会社リミックスポイント エネルギー事業部の村瀬氏・根橋氏による解説動画の内容を、DEEPPOINT編集部が文字起こし・再構成したものです。情報・発言内容は動画収録時点のものです。
日本のエネルギーの未来はどうなるのでしょうか? 本記事では、原子力、主力である火力、そして次世代の鍵を握る洋上風力発電について、それぞれの強みと課題を客観的な視点で整理していきます。安全性(Safety)を大前提とし、安定供給や環境への配慮をパズルのように組み合わせる「S+3E(ベストミックス)」の戦略から、これからのビジネスチャンスを紐解きますね。
エネルギー問題こそ、「客観」が必要な理由
最近ニュースで原子力発電所の再稼働といった話をよく耳にします。「結局日本のエネルギーはどうなるの?」という質問を多くいただきます。
確かに最近原発の話題が増えました。正直なところ、地震が多い日本において原子力発電の安全性はどのように確保されているんだろうとか、世界中が脱炭素って言っているのになんでまだ火力発電使っているのとか、モヤモヤしている人も多いと思います。実は私もその1人です。
その感覚は非常に重要です。エネルギーはどうしても賛成か反対かという感情論になりがちです。しかし経営や投資の視点、そして日本の未来を考える上では、それぞれの発電方法の強みと弱み、これらを客観的なデータで理解する必要があります。
なるほど。感情論ではなく、あくまで機能やコスト、そして環境の面から冷静に見るということですね。
その通りです。今日は話題の原子力から、主力の火力、そして未来の鍵を握る再生可能エネルギーまで、それぞれの発電所の特徴と日本が目指すカーボンニュートラルとの関係を解説します。
原子力発電の現実とジレンマ
では早速ですが、一番聞きにくいところから聞きます。ズバリ、原子力発電です。東日本大震災以降すごく慎重な議論が続いています。それでも再稼働の話が出るっていうのはなぜなんですか?
理由は大きく2つあります。まず脱炭素、そしてエネルギー安全保障です。まず基本的な仕組みですが、原子力はウランの核分裂によって熱で水を沸騰させタービンを回します。最大の特徴は、発電している時にCO2を全く出さないということです。
そっか。煙突から煙が出ているイメージないですもんね。
はい。そしてもう1つ、極めて少量の燃料で膨大な電気を作れるため、1度燃料を入れれば1年以上発電し続けられます。これをベースロード電源と呼びます。天候に左右されず24時間365日安定して大量の電気を送れる。これは産業界にとって非常に頼もしい存在なんです。
発電量が安定していてCO2も出ない。スペックだけ見れば最強に見えますね。でもやっぱりリスクが…。
おっしゃる通りです。事故が起きた際の影響が甚大であること。そして高レベル放射性廃棄物。この最終処分がまだ決まっていないこと。これは解決すべき重い課題です。しかし資源のない日本がCO2を減らしながら安定した電力を確保しようとすると、現状の技術では原子力という選択肢をゼロにするには非常にハードルが高い。それが今の日本の現実なんです。
現在日本では何箇所の原子力発電が稼働しているんですか?
2025年12月現在、国内で稼働中の商業用原子力発電所は12基あります。しかしそのほとんどが西日本エリアに偏っており、東日本で稼働しているのは1基のみなんですね。しかし最近、新潟県や北海道の知事が原発再稼働に同意したというニュースも見かけました。大震災の後、長い時間をかけて安全対策が進められてきましたが、ここに来てようやく地元住民や自治体の協力を経て、再稼働に向けて動き出したというところなんです。世界的にも原発促進の動きが強まっていますし、今後さらに注目が集まりそうですね。

<日本の原発稼働状況(動画より)>
火力発電が持つ「調整力」の不可欠さ
原発の難しさは分かりました。でも今私たちが使っている電気の多くはどこから来ているんでしょう?
依然として主役は火力発電です。現在も日本の電源構成の7割以上を占めています。石油、石炭、天然ガスを燃やしてタービンを回す。一番オーソドックスな方法ですね。
7割も。でも火力発電ってCO2を排出すると思います。今の脱炭素の流れとは逆行していませんか?
その通りです。そこが最大のデメリットです。しかし火力には、他の発電にはない圧倒的なメリットがあるんです。もし今日急に猛暑や極寒になって、みんなが一斉にエアコンをつけたとします。電力需要が急上昇します。この時すぐに対応できるのはどの発電所だと思いますか?
太陽光は天気次第だし、原発は急に止めたり動かしたりできないと聞いたことがあります。となると正解は火力ですか?
正解です。特に天然ガス火力は出力をこまめに調整することが得意なんです。電気が足りないとなったら出力を上げ、余りそうだとなったら絞る。この調整力があるからこそ、私たちは停電せずに暮らせているんですね。
なるほど。縁の下の力持ちだけど環境には悪いジレンマですね。
ええ。なので現在は高効率化と言って、少ない燃料でたくさん発電できる技術を導入したり、将来的には燃やしてもCO2を出さない水素やアンモニアを燃料に混ぜる技術開発が進められています。火力をゼロにするのではなく、火力をクリーンにするという挑戦ですね。
世界の再エネの主役「洋上風力」と日本の現在地
火力の進化も大事ですが、やっぱり期待したいのは再生可能エネルギーです。日本だとあちこちで太陽光パネルを見かけますが、世界でもやっぱり太陽光がメインなんですか?
そこが実は日本と世界の大きな違いなんです。日本は平地の面積あたりの太陽光導入量が世界トップクラスですが、世界全体で見ると再エネの主役は風力発電になりつつあります。
太陽光じゃなくて風力なんですか? 日本ではあまり風車を見かけない気がしますが。
例えば環境先進国のデンマークをご存知ですか? デンマークではなんと国内電力の50%以上を風力発電のみで賄っているんです。また、日本と同じ島国であるイギリスも、電力の約30%を風力で作っています。対して日本は風力発電の割合がまだ1%程度しかありません。この差は圧倒的です。
同じ島国なのになんでそんなに違うんですか?
彼らが力を入れているのが、陸の上ではなく海の上に巨大な風車を建てる洋上風力発電だからです。海の上なら風を遮る建物もない。陸よりも強くて安定した風が吹きます。実は今、この洋上風力が再エネの切り札として世界中で建設ラッシュが起こっているんですよ。
海の上なら日本も場所はたくさんありそうです。
日本は世界6位の排他的経済水域を持つ海洋国家ですから、ポテンシャルは凄まじいものがあります。しかしヨーロッパのように大陸棚が沖合まで伸びる遠浅な地形とは異なり、日本の沖合は急激に水深が深くなります。そのため海の上に風車を浮かべる浮体式という方式を採用する必要があります。着床式に比べてコストが高くなるという課題があります。またヨーロッパに比べて風が一定ではないこと、風力が弱いことなどからも、採算を取ることが難しいとも言われていますね。世界の導入実績で見ると、現在は中国が圧倒的トップで、世界の洋上風力の約半分を占めています。それにヨーロッパが続く形ですね。
日本は遅れているんですか?
残念ながら出遅れています。しかし政府もこれを重く見て、秋田県や千葉県などを促進区域に指定して急ピッチで開発を進めようとしています。陸の太陽光で先行した日本が、今海の風力でどこまで巻き返せるか、これが日本の脱炭素の最大の鍵になると言われています。

<洋上風力発電の日本での導入課題(動画より)>
「S+3E」とベストミックスが導く現実解
なるほど。海が戦場になるわけですね。風力以外はどうですか? 例えば水力とか。
水力も国によって事情が違いますね。例えばカナダやブラジルは巨大な川や滝があるので、電力の60から70%近くを水力だけで賄えています。これは地理的な幸運ですね。日本は水は豊かですが、そこまではいかないですね。日本は山が急なので大規模なダムを作れる場所が限られています。ですがその代わり、日本には地熱があります。火山国ですからね。ただ地熱発電は開発に時間がかかるのがネックです。物理的な設備建設もそうですが、地熱を集められる地域にはすでに温泉地化していることもあり、そう安々と開発を進められるものではないようです。
こうやってみると国ごとに勝ちパターンが全然違うんですね。イギリスは風、ブラジルは水。じゃあ日本は?
日本は資源が分散しているので、太陽光、洋上風力、そして既存の火力や原子力を総動員して組み合わせるしかない。これが次にお話するベストミックスの考え方に繋がるわけです。
こうやって聞くと、どの発電方法も一長一短で、どれか一つに頼るのは危険だということがよくわかります。太陽光だけでもダメ、火力だけでもダメ。
その通りです。だからこそ国や私たちエネルギー事業者が目指しているのがエネルギーミックス、ベストミックスなんですよ。「S+3E」という言葉はご存知ですか? エネルギー政策の基本方針ですね。セーフティ(安全性)を大前提として、エネルギーセキュリティ(資源を確保し停電させないこと)、エコノミック・エフィシエンシー(電気を安く抑えること)、エンバイロメント(CO2を減らすこと)。この4つを同時に達成するために、原子力、火力、再エネをパズルのようにうまく組み合わせるんです。
私たちが中期経営計画で掲げている戦略もまさにこの流れの中にあり、不安定な再エネを蓄電池やアグリゲーション技術で補いながら再エネ比率を高めていく。これがこれからのビジネスの勝機になります。
なるほど。100%再エネが理想だけど、現実的には組み合わせでバランスを取りながら徐々に再エネを増やしていく移行期間が続くわけですね。
はい。この移行期間にこそ、私たちのような新電力会社や新しいエネルギー技術を持った企業の出番があります。発電所の種類を知ることは日本の課題を知ること。そして課題があるところには必ずビジネスチャンスがあります。

<S+3Eの概念図(動画より)>
まとめ:各発電技術の強みと課題
- 原子力:CO2ゼロの安定電源だが、安全対策と廃棄物が課題。
- 火力:調整力に優れるが、脱炭素のために水素やアンモニアなどへの燃料転換が必要。
- 再エネ:脱炭素に向けた主要発電だが、天候リスクや立地的制約があるため、蓄電池などとの連携が不可欠。
これらを組み合わせるベストミックスが、カーボンニュートラルへの現実解ですね。
ベースロード電源:天候や昼夜に左右されず、24時間365日、一定量の電力を安定して低コストで供給し続けられる発電設備のこと。原子力発電や石炭火力発電などが該当します。
S+3E:日本のエネルギー政策の基本方針を示す言葉。Safety(安全性)を絶対的な前提条件とし、Energy Security(安定供給)、Economic Efficiency(経済効率性:低コスト)、Environment(環境適合:脱炭素)の3つの「E」を同時にバランスよく満たすことを目標としています。
洋上風力発電(着床式と浮体式):海の上に風車を建設して発電する方法。風車の基礎を海底に直接固定する安価な「着床式」に対し、水深の深い海域(日本の近海など)では海に浮かべた構造物に風車を立てる「浮体式」を採用する必要があり、コストや技術的なハードルが高くなります。
アグリゲーション技術:分散している再生可能エネルギー発電所や蓄電池などをIoTなどのデジタル技術を用いて束ね(アグリゲートし)、ひとつの巨大な発電所のように統合制御する技術のこと。天候によって発電量が不安定になる再エネの弱点を補うために不可欠な技術とされています。
編集:DEEPPOINT編集部/出典:リミちゃんねる(株式会社リミックスポイント)

