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連載「市場をどう見るか第八回

電力・エネルギー市場をどう見るか

電力・エネルギー市場をどう見るか

AI、電化、脱炭素、地政学が交差する、次世代産業インフラ。KPMGで監査、IPO、M&A、財務戦略に関わってきた立場から見ると、電力・エネルギー市場は、単なる公益事業や資源ビジネスではありません。AIデータセンター、半導体、EV、ロボティクス、製造業の国内回帰、都市インフラ、国家安全保障のすべてを支える、最も基礎的な産業インフラです。

DEEPPOINT編集部DEEPPOINT編集部
公開 2026.07.09更新 -

KPMGで監査、IPO、M&A、財務戦略に関わってきた立場から見ると、電力・エネルギー市場は、単なる公益事業や資源ビジネスではありません。AIデータセンター、半導体、EV、ロボティクス、製造業の国内回帰、都市インフラ、国家安全保障のすべてを支える、最も基礎的な産業インフラです。

用語解説

電力・エネルギー市場:発電、送配電、小売、燃料、蓄電、再生可能エネルギー、原子力、電力取引、需要制御などを含む広い産業領域。

公益事業:電力、水道、ガス、通信など、社会生活に不可欠なサービスを提供する事業。

産業インフラ:あらゆる産業活動を支える基盤。電力は、データセンター、工場、交通、通信の前提となる。

かつてエネルギー市場は、石油・天然ガス・石炭などの一次エネルギーを中心に語られてきました。しかし現在は、世界が「電化」の方向へ進んでいます。EV、ヒートポンプ、データセンター、空調、産業電化が拡大し、最終的に使われるエネルギーの中で電力の重要性が高まっています。IEAは、現在を「Age of Electricity」、すなわち電気の時代と位置づけています。

用語解説

一次エネルギー:自然界から直接得られるエネルギー。石油、天然ガス、石炭、太陽光、風力、水力、ウランなど。

電化:これまで化石燃料で動いていた用途を、電力で動く仕組みに置き換えること。

ヒートポンプ:空気や地中の熱を移動させて冷暖房や給湯を行う技術。高効率な電化技術の代表例。

IEA:International Energy Agencyの略。国際エネルギー機関。エネルギー需給、政策、投資に関する主要な国際機関。

参照図表1:世界電力需要の推移

電力・エネルギー市場を見るうえで最初に確認すべきは、世界の電力需要が再び強く伸びていることです。IEAによれば、世界の電力需要は2024年に前年比4.3%増と大きく伸び、2025年は3.3%、2026年は3.7%の増加が見込まれています。背景には、産業活動、空調、EV、データセンター、AIインフラ、そして幅広い電化があります。

用語解説

電力需要:家庭、企業、工場、データセンターなどが消費する電力量の合計。

TWh:テラワット時。1TWhは10億kWh。国や世界全体の電力需要を表す際に使われる。

EV:Electric Vehicleの略。電気自動車。

AIインフラ:AIの学習・推論を支えるGPU、サーバー、データセンター、電力、冷却、ネットワークの総称。

図表1:世界電力需要の推移

単位:TWh。2024年は実績推定、2025年・2026年はIEAの成長率見通しを基にした概算。

この需要増加の意味は大きいです。電力は、単に「供給量を増やせばよい」ものではありません。発電所、送電網、配電網、蓄電池、需給調整、電力市場、系統運用、燃料調達、設備投資、規制制度が一体で整わなければ、安定供給は実現できません。電力市場のボトルネックは、発電能力だけでなく、送配電網と柔軟性に移っています。

用語解説

送電網:発電所から大口需要地や変電所へ高電圧で電気を送るネットワーク。

配電網:変電所から家庭、ビル、工場などへ電気を届ける地域ネットワーク。

需給調整:電力の需要と供給を常に一致させるための運用。電力は大規模に貯めにくいため重要。

柔軟性:需要変動や再エネ出力変動に合わせて、発電・蓄電・需要を素早く調整できる能力。

1. 電力・エネルギーとは何か

エネルギーとは、社会や産業を動かすための力です。石油、天然ガス、石炭、原子力、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの一次エネルギーがあり、それらを発電、熱、燃料、動力として利用します。その中でも電力は、エネルギーを最も制御しやすく、デジタル産業やAI時代に適した形に変換したものです。

用語解説

天然ガス:主にメタンを成分とする化石燃料。発電、都市ガス、化学原料などに使われる。

原子力:ウランなどの核分裂反応で生じる熱を利用して発電する方式。

再生可能エネルギー:太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界で継続的に利用できるエネルギー。

バイオマス:木材、廃棄物、農業残渣など、生物由来の資源を燃料として使うエネルギー。

電力システムは、大きく分けると、発電、送電、配電、小売、需要家、電力市場、制御システムで構成されます。発電所で作られた電気は、送電網を通じて広域に送られ、配電網を通じて家庭や企業に届きます。近年は、需要家側にも太陽光、蓄電池、EV、デマンドレスポンスが入り、電力システムは一方向から双方向のネットワークへ変わりつつあります。

用語解説

小売:家庭や企業に電気を販売する事業。

需要家:電力を使う家庭、企業、工場、データセンターなど。

デマンドレスポンス:電力需給に合わせて、需要家が電力使用量を増減させる仕組み。

双方向ネットワーク:電力会社から需要家へ一方的に送るだけでなく、需要家側の発電・蓄電・制御も活用する電力網。

参照図表2:電力・エネルギーバリューチェーン図

電力・エネルギー産業を理解するには、発電所だけを見るのでは不十分です。燃料・資源、発電、送配電、蓄電・調整力、小売・市場、需要家アプリケーションまでが一体となって価値を生みます。特に今後は、発電資産よりも、送配電網、蓄電、電力制御ソフトウェア、需要側管理が重要になります。

図表2:電力・エネルギーバリューチェーン図

電力市場は、燃料・資源から需要家アプリケーションまでの長いバリューチェーンで成り立つ。

領域主な役割代表的プレイヤー・技術
燃料・資源発電に必要な燃料・自然資源を確保するLNG、石炭、ウラン、太陽光資源、風況、水資源、地熱資源
発電各種エネルギーを電気に変換する火力、原子力、太陽光、陸上風力、洋上風力、水力、地熱
送配電発電所から需要地へ電気を届ける送電会社、配電会社、変電設備、HVDC、系統接続
蓄電・調整力需要変動と再エネ出力変動を吸収するリチウムイオン電池、揚水発電、長時間蓄電、VPP、DR
小売・市場需要家への販売、卸取引、需給管理を行う電力小売、卸電力市場、容量市場、需給調整市場
需要家・アプリ電力を使って産業価値を生むAIデータセンター、EV、半導体工場、製造業、都市、住宅
区分領域主な構成要素
Step 01燃料・資源天然ガス、石炭、ウラン、太陽光、風、地熱、水資源等
Step 02発電火力、原子力、太陽光、風力、水力、地熱等
Step 03送配電高圧送電、変電、地域配電、系統接続
Step 04蓄電・調整力蓄電池、揚水、需給調整、VPP、DR
Step 05小売・市場電力販売、卸市場、容量市場、需給管理
Step 06需要家・アプリAIデータセンター、EV、工場、住宅、都市インフラ
用語解説

LNG:Liquefied Natural Gasの略。天然ガスを冷却して液化したもの。輸送・貯蔵しやすい。

HVDC:High Voltage Direct Currentの略。高圧直流送電。長距離・大容量送電に適する。

VPP:Virtual Power Plantの略。分散した蓄電池、EV、太陽光、需要制御を束ねて一つの発電所のように運用する仕組み。

容量市場:将来の供給力を確保するため、発電設備や需要抑制能力に対価を支払う市場。

2. 電力・エネルギー分野における技術課題とは

第一の課題は、需要増加と供給制約の同時進行です。AIデータセンター、半導体工場、EV、空調需要が増える一方で、発電所や送電網は短期間で増設できません。特にデータセンターは大規模かつ局所的な電力需要を生み、地域の送電網に大きな負荷をかけます。

用語解説

供給制約:発電所、送電線、変電所、燃料、人材、許認可などの不足により、需要に十分対応できない状態。

局所的需要:特定地域に集中して発生する需要。データセンター集積地や工業団地で問題になりやすい。

系統負荷:送配電網にかかる電力の負担。負荷が高すぎると停電や接続制限の原因になる。

第二の課題は、再生可能エネルギーの変動性です。太陽光は夜間に発電できず、風力は風況に左右されます。再エネ比率が高まるほど、蓄電池、揚水発電、火力の調整力、地域間連系線、需要側制御が重要になります。再エネの課題は「発電コスト」から「統合コスト」へ移っています。

用語解説

変動性:天候や時間帯によって発電量が変わる性質。太陽光・風力の大きな特徴。

揚水発電:余剰電力で水を高所へ汲み上げ、必要時に下へ流して発電する蓄電型の発電方式。

地域間連系線:異なる地域の電力系統をつなぐ送電線。余剰電力や不足電力を地域間で融通する。

統合コスト:再エネを電力システムに組み込むために必要な送電、蓄電、調整力、制御のコスト。

第三の課題は、電力価格と投資回収です。電力インフラは巨額の設備投資を必要としますが、価格が高すぎれば産業競争力を損ない、安すぎれば投資が進みません。再エネ、原子力、火力、蓄電、送電網、データセンター向け電源のいずれも、長期契約、容量市場、補助金、電力市場設計が重要になります。

用語解説

投資回収:設備投資に投じた資金を、将来の収益で回収すること。

長期契約:発電事業者と需要家が長期にわたり電力価格や供給条件を決める契約。PPAが代表例。

PPA:Power Purchase Agreementの略。電力購入契約。再エネ開発や企業調達でよく使われる。

市場設計:電力取引、容量確保、需給調整、価格形成のルールを設計すること。

第四の課題は、エネルギー安全保障です。天然ガス、石油、石炭、ウラン、重要鉱物は国際情勢の影響を強く受けます。燃料価格の高騰や輸入途絶は、電力価格、企業収益、家計、国家安全保障に直結します。脱炭素だけでなく、安定供給、価格、地政学リスクを同時に考える必要があります。

用語解説

エネルギー安全保障:必要なエネルギーを、安定的かつ手頃な価格で確保できる状態を守る考え方。

重要鉱物:蓄電池、モーター、送電設備、再エネ設備に必要なリチウム、ニッケル、コバルト、銅、レアアースなど。

地政学リスク:戦争、制裁、外交関係、資源国の政策変更などが供給や価格に与えるリスク。

参照図表3:技術ブレイクスルー整理図

電力・エネルギー分野のブレイクスルーは、単一の発電技術では起きません。太陽光・風力の低コスト化、蓄電池、送電網、AI需給予測、VPP、次世代原子力、長時間蓄電、水素、パワー半導体が組み合わさることで、安定性、低コスト、脱炭素、産業競争力を同時に実現する方向へ進みます。

図表3:電力・エネルギー技術ブレイクスルー整理表

課題、解決技術、主要プレイヤー、主なアプリケーションを対応させて整理。

技術領域解決する課題主要プレイヤー・技術主なアプリケーション
太陽光・風力の低コスト化発電コスト、脱炭素、燃料輸入依存太陽光パネル、陸上風力、洋上風力、PPA企業再エネ調達、地域電源、データセンター電源
蓄電池・長時間蓄電再エネ変動、ピーク需要、需給調整リチウムイオン、ナトリウムイオン、フロー電池、揚水系統蓄電、工場、データセンター、マイクログリッド
送電網・HVDC地域間融通、再エネ接続、データセンター需要集中高圧直流送電、系統増強、変電設備洋上風力、広域連系、産業団地、都市電力
AI需給予測・系統制御需要変動、再エネ予測、運用効率AI予測、EMS、DERMS、デジタルツイン電力市場、VPP、系統運用、工場エネルギー管理
VPP・デマンドレスポンスピーク需要、調整力不足、設備投資抑制蓄電池、EV、空調制御、スマートメーター家庭、ビル、工場、EV充電、地域電力
次世代原子力・SMR安定電源、脱炭素、産業用大口電力小型モジュール炉、先進炉、核燃料サイクルデータセンター、産業電源、地域熱供給
水素・アンモニア長期貯蔵、産業熱、燃料転換グリーン水素、ブルー水素、アンモニア混焼製鉄、化学、発電、船舶燃料
パワー半導体電力変換効率、機器小型化、損失削減SiC、GaN、インバータ、電源制御EV、再エネPCS、データセンター電源、産業機器
用語解説

SMR:Small Modular Reactorの略。小型モジュール炉。小規模で工場生産しやすい原子炉として期待される。

EMS:Energy Management Systemの略。エネルギー使用量や設備を管理・最適化するシステム。

DERMS:Distributed Energy Resource Management Systemの略。分散型エネルギー資源を管理するシステム。

PCS:Power Conditioning Systemの略。太陽光や蓄電池の電力を系統に接続できる形へ変換する装置。

SiC / GaN:シリコンカーバイド、窒化ガリウム。高効率なパワー半導体に使われる次世代材料。

3. 電力・エネルギーにおける技術的解決、すなわちブレイクスルーとは

第一のブレイクスルーは、再生可能エネルギーと蓄電の組み合わせです。IRENAによれば、蓄電池コストは2010年から2024年にかけて93%低下しました。太陽光・風力の発電コスト低下に蓄電池を組み合わせることで、再エネは単なる「安い電源」から、調整可能な電力供給源へ進化しつつあります。

用語解説

IRENA:International Renewable Energy Agencyの略。国際再生可能エネルギー機関。

蓄電池コスト:1kWhの電力を蓄えるために必要な設備コスト。低下すると再エネ導入が進みやすい。

調整可能な電源:需要に合わせて供給量を調整しやすい電源。蓄電と組み合わせることで再エネも調整力を持てる。

第二のブレイクスルーは、送電網と系統制御の高度化です。再エネは資源のある場所と需要地が離れていることが多く、送電網が不足すると発電しても電気を運べません。今後は、送電線の増強、HVDC、変電設備、系統用蓄電池、AIによる系統運用が重要になります。電力市場の主戦場は、発電からネットワークへ広がっています。

用語解説

系統制御:電力の周波数、電圧、需給バランスを安定させる運用技術。

系統用蓄電池:電力網の安定化や需給調整のために設置される大規模蓄電池。

ネットワーク:ここでは送電網・配電網を指す。電気を運ぶための社会インフラ。

第三のブレイクスルーは、VPPと需要側制御です。これまで電力システムは、需要に合わせて発電所を動かす考え方が中心でした。今後は、需要側の蓄電池、EV、空調、工場設備を制御し、電力システム全体を最適化する方向へ進みます。これにより、ピーク電力を下げ、送配電投資を抑え、再エネをより多く受け入れられます。

用語解説

ピーク電力:一定期間内で最も高い電力需要。ピークに合わせた設備投資が必要になる。

需要側制御:需要家の電力使用を調整し、需給バランスや電力価格を最適化する仕組み。

最適化:発電、蓄電、需要、価格、制約を踏まえ、全体として最も効率よく運用すること。

第四のブレイクスルーは、データセンター向け電源の再設計です。AIデータセンターは、24時間365日の大電力を必要とします。そのため、再エネPPA、蓄電池、ガス火力、原子力、地域電源、冷却、排熱利用を組み合わせた専用電源設計が重要になります。AI時代には、計算能力だけでなく、電力調達能力そのものが競争力になります。

用語解説

専用電源:特定の工場やデータセンター向けに確保・設計された電源。

冷却:データセンターや電力設備の熱を除去する技術。空冷、水冷、液浸冷却などがある。

排熱利用:データセンターや工場から出る熱を、暖房、給湯、農業、地域熱供給に再利用すること。

4. ブレイクスルーを担うプレイヤーとアプリケーション

電力・エネルギー市場の主要プレイヤーは、従来型の電力会社だけではありません。再エネ開発事業者、蓄電池メーカー、送配電会社、重電メーカー、電力小売、データセンター事業者、AI企業、半導体メーカー、自動車会社、金融機関、自治体が重要な役割を持ちます。

用語解説

重電メーカー:発電機、変圧器、送電設備、電力制御機器など大型電力設備を製造する企業。

再エネ開発事業者:太陽光、風力、蓄電池などの発電・蓄電プロジェクトを開発・運営する企業。

電力小売:発電事業者や市場から電力を調達し、家庭や企業に販売する事業者。

アプリケーションで見ると、最大の成長ドライバーはAIデータセンター、半導体工場、EV充電、電化工場、スマートシティ、マイクログリッドです。特にAIと半導体は、電力を大量に消費するだけでなく、電力制御や省エネのための技術も提供するため、需要家であると同時にエネルギー産業の革新者にもなります。

用語解説

マイクログリッド:地域や施設単位で、発電・蓄電・需要を管理し、必要に応じて独立運用できる小規模電力網。

スマートシティ:データ、センサー、AI、エネルギー制御を活用して都市機能を高度化する都市構想。

省エネ:同じサービスや生産量を、より少ないエネルギーで実現すること。

原田浩志としての市場観:電力はAI時代の「最終制約条件」である

私が電力・エネルギー市場を見るうえで最も重要だと考えているのは、電力がAI時代の「最終制約条件」になりつつあるという点です。半導体やGPUを調達できても、それを動かす電力がなければAIインフラは成立しません。データセンターを建てられても、系統接続、電力契約、冷却、水、地域合意が整わなければ稼働できません。

用語解説

最終制約条件:事業成長を最終的に制限する最も重要なボトルネック。

系統接続:発電設備や需要設備を電力網に接続すること。空き容量や工事期間が課題になる。

地域合意:発電所、送電線、データセンターなどの建設について、地域住民・自治体と合意形成すること。

これからの産業競争力は、安い電力を安定的に確保できるかどうかで決まります。AI、半導体、製造業、EV、ロボティクス、データセンターのすべてが電力を必要とします。したがって、電力・エネルギー市場は、単なるコスト項目ではなく、企業戦略、国家戦略、投資戦略の中心になります。

用語解説

産業競争力:企業や国が、国際市場で生産・販売・技術開発を進める力。

企業戦略:企業が市場で競争優位を築くための長期的な方針。

国家戦略:国が産業、技術、安全保障、経済成長を実現するための政策方針。

投資戦略:どの事業、技術、資産に資金を配分するかの方針。

電力は、AI時代の「燃料」であり、半導体を動かす血液であり、国家と企業の競争力を決める最終インフラである。

一方で、電力・エネルギー市場には大きなリスクもあります。設備投資の巨大さ、許認可の長期化、燃料価格の変動、地政学リスク、再エネ出力の変動、送電網不足、地域合意、規制制度の変更、電力価格の上昇です。したがって、電力市場を「再エネが伸びる市場」と単純に見るべきではありません。正しくは、電力需要、送配電網、蓄電、調整力、脱炭素、AI需要、国家安全保障が交差する、最も現実的なディープテック市場と見るべきです。

用語解説

許認可:発電所、送電線、蓄電池、データセンターなどを建設・運営するために必要な行政上の承認。

調整力:電力の需要と供給のズレを調整する能力。火力、蓄電池、揚水、DRなどが担う。

脱炭素:温室効果ガスの排出を削減し、実質ゼロを目指す取り組み。

今後の勝ち筋は、安い発電所を持つことだけではありません。需要地に近い電源、送配電網への接続、蓄電と制御、長期電力契約、地域との合意、AIによる需給最適化、排熱利用、データセンターや工場との一体設計を実現できるかどうかです。電力・エネルギー市場の勝者は、発電する企業ではなく、電力を安定的に、安く、賢く、産業価値へ変換できる企業になると考えています。

用語解説

需要地:電力を多く使う地域。都市、工業地帯、データセンター集積地など。

需給最適化:発電、蓄電、需要、価格、天候を踏まえ、最も効率よく電力を使うこと。

一体設計:電源、送配電、蓄電、冷却、需要設備を別々ではなく全体として設計すること。

参考資料

  1. IEA, “Electricity 2025 – Demand.” https://www.iea.org/reports/electricity-2025/demand
  2. IEA, “Electricity Mid-Year Update 2025 – Demand: Global electricity use to grow strongly in 2025 and 2026.” https://www.iea.org/reports/electricity-mid-year-update-2025/demand-global-electricity-use-to-grow-strongly-in-2025-and-2026
  3. IEA, “Electricity 2026 – Demand.” https://www.iea.org/reports/electricity-2026/demand
  4. IEA, “World Energy Investment 2025.” https://www.iea.org/reports/world-energy-investment-2025
  5. IEA, “Global energy investment set to rise to $3.3 trillion in 2025 amid economic uncertainty and energy security concerns.” https://www.iea.org/news/global-energy-investment-set-to-rise-to-33-trillion-in-2025-amid-economic-uncertainty-and-energy-security-concerns
  6. Ember, “Global Electricity Review 2025.” https://ember-energy.org/latest-insights/global-electricity-review-2025/
  7. IRENA, “Renewable Power Generation Costs in 2024.” https://www.irena.org/Digital-Report/Renewable-Power-Generation-Costs-in-2024
  8. BloombergNEF, “Energy Transition Investment Trends.” https://about.bnef.com/insights/finance/energy-transition-investment-trends/
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