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連載「日本を経営する第十一回

【第11回】国際金融都市と「予測市場」——日本金融の2つの未来

【第11回】国際金融都市と「予測市場」——日本金融の2つの未来

クロスボーダー運用資産が実質ゼロの日本が、香港・シンガポールから100〜500兆円を呼び込む「外国人金融課税0%」という選択肢。そして米大統領選で予測精度を実証し、KalshiとPolymarketが数兆円企業に育った「予測市場」。日本金融が持つ2つの未来を示す連載最終回。

小田玄紀小田玄紀内藤 瑠那内藤 瑠那
公開 2026.07.13更新 -

※本記事は小田玄紀さんのnote記事「日本を「経営」する:GDP1000兆円への再起動計画(⑤金融)」を許諾を得て再掲載したものです。本文は原文のまま、見出しのみ編集部で再構成しています。

出典:https://note.com/genkioda/n/n0fda17d2a860

香港・シンガポールの資金を日本へ。「外国人金融課税0%」という選択肢

そして、日本には世界最強レベルの金融力をさらに高められる可能性がある2つのポテンシャルを有しています。1つが『国際金融都市』、もう1つが『予測市場』です。

『国際金融都市』については、日本では北海道・東京・大阪・福岡が国際金融都市特区として認定をされ、主要地方自治体および政府としても国際金融都市の実現に力を入れています(私も大阪国際金融都市のアンバサダーを務めています)。

しかし、今は現実的にはほぼ何も出来ていない状況です。国際金融都市としての重要な指標である外国人・外国企業の運用資産残高(クロスボーダーAUM)については以下のようになります。

1位  香港     約460兆円 2位  スイス    約450兆円 3位  シンガポール 約320兆円

であり、日本は実質的にほぼ0円です(外国人保有の日本株式は約710兆円存在しますが、これはただ外資が日本株を買っているだけなので、運用資産にはカウントされません)。

これは言うまでもなく税制の課題があり、日本は古くから「勤労意欲を削ぐことを防ぐために金融課税については原則として限定的にしか優遇しない」という原理原則が取られてきたことが起因しています。

片や『金融課税が0%の国』と『総合課税55%、金融優遇が取られても20%の国』で比較をした場合に、後者の日本が国際金融において選ばれることは『投資における合理的判断』においてあり得ません。

しかし、今後の地政学リスクを考えた場合に、日本が仮に外国人富裕層に対して金融課税0%を導入したとしたら、香港の国際金融資産の一定割合(実際には非常に多くの割合)が日本に流入する可能性があります。シンガポールからも一定割合(これは本当に一定割合)が日本に流入する可能性があります。合計100~500兆円位の金融資産が日本に流入する可能性があります。

「従来の国家運営判断」では、こんな外国人優遇は日本人に対して説明が出来ないから考えられないという回答になることは自明です。ただ、ここは感情論は置いておき、「日本の国家経営」という観点から判断をするべき事項です。

どのみち、この100~500兆円という金融資産は今のままでは日本には入ってこない資産です。頑張って自治体が英語対応窓口を導入しても、外国人向けに金融機関口座開設の支援をしても、外国人富裕層向けの教育機関を誘致しても、ほとんど影響はありません。日本に赴任することとなった一部の外資系金融機関の経営層に対しては恩恵があるかもしれませんが、彼らはこれらの制度がなくても日本赴任が決まっているので、これらの施策をやってもやらなくても実態はあまり変りありません(それでも数百億円規模では日本の金融資産が増えるので、自治体としての施策達成感には繋がります)。

本質的に大事なことは、100~500兆円という単位の金融資産が日本に流入し、また、こうした資産を持つ超富裕層が日本に在住または来日することで大きな国内投資・国内消費がされることが重要です。

日本の食文化、環境は超富裕層からも評価されますし、何よりも重要なことは「長寿化政策」です。『日本に住んだら健康に長生きすることができる』。このブランディングが出来れば、超富裕層は殺到して日本に移住してきます。長生きに代わる魅力的な資産は無いからです。

超富裕層が日本に在住することでの経済効果を適切に理解し、「他の国際金融都市同様の税率適用」および「長寿化プランの提供」をすることで、日本は国際金融都市としてトップクラスに入ることが可能になります。

これらの判断は自治体では要望提出しか出来ないことなので、政府としての「経営判断」が問われることとなります。

大統領選で実証された「予測市場」日本での解禁はいつ?

もう1つが「予測市場」です。

「予測市場」はまだ一部の人しか認知がされていないかもしれませんが、新しい金融市場としてアメリカを中心に認知が広まりつつあります。

予測市場の可能性(ゴールドマン・サックスの関心表明、ICEによるPolymarket出資)

この資料は今年の2月頃に作成をした資料の一部ですが、ゴールドマンサックスのソロモンCEOが予測市場に対する興味を強く表明したり、ニューヨーク証券取引所の運営会社であるICEが20億ドル(3000億円)の投資をPolymarket社に対して昨年実施しています。

予測市場が注目を集めたのは先回の米国大統領選挙においてです。多くのメディアがカマラ・ハリス氏の勝利を予想していた中で、Polymarketが早期の段階でトランプ勝利を予測していました。

これは予測市場の仕組みが起因しています。予測市場は将来がどうなるかということに対して、自らが賭け(ベット)します。自らが賭けをしているため、より真剣に分析をするようになります。そのため、ただのアンケートに比べて将来を予測することの精度を高めようとするインセンティブが働きます。このため、通常のアンケートよりも高い精度で将来が予測できるとされています。

たとえば株式掲示板などでも「買い」や「売り」の傾向が表示されるようになっていますが、この傾向表示は何の根拠もなく、『ただの気分』で意向表明されただけのものです。予測市場の場合は自らが賭けをして、当たった場合はリターンが入ってくることから、より真剣に投票をするようになります。

米国ではこの点が高く評価をされ、CFTC(商品先物取引委員会)がKalshiやPolymarketに対して認可を出しており、この2社は現在著しい成長を遂げており、いずれも未上場ながらKalshiは時価総額3兆円、Polymarketは時価総額が2兆円となっています。

なお、日本では予測市場は現時点においてはオンライン・ギャンブルとされてユーザーに対して賭博罪が適用されてしまいます。

こちらは金融という側面だけでなく、警察庁を含めた判断が必要になる領域であるため、中々、日本ではすぐに全面解禁されることは難しいかもしれませんが、米国で認可を受けた流れがあることから、これから数年後には日本でも認められるようになる可能性があります。

この際に「米国を含めて国際的な流れだから日本でも導入しよう」という考え方ではなく、「日本にとって予測市場がどのような社会的価値があるのかどうか」という判断軸で評価をしていくことが本来は求められる姿勢だと思います。

「金融は信頼を前提とする」という言葉はよく使われる言葉です。ただ、遡ってみれば、『金融商品は元々は全ていかがわしいもの』でした。

株式投資は東インド会社から発祥しましたが、これもそもそもは「成功するか失敗するかの博打」でした。投資した船が無事にたどり着けるかどうかを正確に判断する方法はなく、あくまでも運任せから投資はスタートしています。

保険も同様です。生命保険は今でこそ普及していますが、導入された当初は「死亡したら遺族に金が入る」という商品設計から、多くの犯罪も生まれました。

全ての金融商品はこのようにいかがわしさに起因しています。暗号資産も10年前は極めて怪しいものとされていました(その意味でも暗号資産が金商法にカテゴライズされることは非常に感慨深いものがあります)。

そのため、予測市場についても「怪しいかどうか」で判断することは不適当であり、むしろ怪しいからこそ金融として評価をして制度設計するべきなのではないでしょうか。

予測市場もこれから数百兆円規模の市場になるとされています。まだ、アメリカ以外はこの市場に対して積極的な評価が出来ていません。今から日本が評価をすれば、十分に予測市場領域においても世界2~3位の位置を確立することが出来ます。これも日本の金融市場がバッファとして持つもう1つの可能性です。

これまで、日本経済・財政の再生可能性について、①エネルギー政策・②半導体・生成AIなど最先端産業・③長寿化政策、そして、これらを支える基盤としての④金融政策について考察をしてきました。

改めて、再評価をしてみると日本には多くの可能性があることが見えてきます。そろそろ、日本を卑下するのは終わりにしませんか?これほど可能性があり、再生可能性がある国はありません。

それに気付いたため、私は今回、再び独立して、日本経済・財政を10年間で再生させるために日本経済財政再生機構という法人を設立することにしました。

4月に発表をして以来、多くの政治リーダー、企業経営者から賛同の声を頂いています。また、海外からもこの見解に対して賛同頂くようになっています(そのため、5月・6月は半分程度が海外に呼ばれて話をしています)。

日本のGDPを1000兆円にして、税収を130兆円にすることは目標ではなく、ただの通過点です。以前も書いたように、本来、他国と同程度の成長が日本も出来ていれば、今頃日本のGDPは2700兆円になっていた可能性がある訳です。そう考えると1000兆円は本来の価値の40%程度に過ぎません。

また、経済的指標だけでなく、精神的豊かさを含めて日本は再生していく必要があります。日本人が日本に対して誇りを持てるようになること。それが実現できて初めて日本再生となります。ただ、この点も何をすれば良いかということは見えています。この点は追々また考えを共有していきたいと思います。

ここまでのNoteにて、日本再生のための施策についての骨子は書いてきました。これから先は、派生テーマとして各論になりますが、地方再生・観光立国としての可能性などについても考察を書いていきたいと思います。

2026年6月17日 小田玄紀

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小田玄紀
日本経済財政再生機構 / Remixpoint創業者
小田玄紀

「頑張る人が報われる」社会を創るために、2001年東京大学在籍時に起業。2002年から日本で社会起業家の概念を啓蒙し、社会起業家支援セクターの立上げを行う。2011年東日本大震災を契機に事業再生に従事。株式会社リミックスポイントの経営に参画し、同社の時価総額を4億円から6年で250倍の1000億円にする。2018年紺綬褒章受章。2019年世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会理事、一般社団法人日本暗号資産取引業協会理事、一般社団法人日本デジタル空間経済連盟理事。2026年5月にシンクタンク「日本経済財政再生機構」を設立。

内藤 瑠那
編集長
内藤 瑠那

青山学院大学経済学部卒業後、美容系専門商社、カカクコムを経て独立。メディア立ち上げ、インタビュー取材、SNS運用、コンテンツディレクション、Webマーケティングまで幅広く経験。「宣伝会議 編集・ライター養成講座」第49期最優秀賞受賞。DEEPPOINTでは、編集方針の設計、取材企画、記事制作、SNS発信を統括する。