前編では、いまの電力システムの構造的な問題と、森田さんが福島で動かしている実験について聞きました。後編では、もう少し先の未来について聞きます。森田さんが目指している未来はどんなものなのか?
前編で「電気は現代のお金だ」と腑に落ちたところから、話はさらに深くなります。いざ、後編へ!
- 「推し活として電気を渡す」が、技術的にどう実現するのか
- 法律の壁と、5〜10年後の導入シナリオ
- 「電力の全体主義からの脱却」森田さんが本当に作りたい社会
「エネルギー資産を自らどうするか判断して、省エネして電気を売るか、安い時に気に入った家庭から購入する、または推し活として電気を渡す。そんな世界を想像しています」 ── 森田直さん
「推し活」として電気を送る、が技術的に実現する仕組み

「推し活として電気を渡す」って気になりすぎます。好きなアーティストのライブ会場に自分の電気を送る、ということは実際にできるんですか?
できますよ。さっきのダッシュボードで見てもらった通り、自分の家の蓄電池から「マイナス10アンペア」という指令を出すと、その電力が地域の電力網を通じて流れていく。受け取る側のライブ会場が充電器を動かしていれば、そこに届きます。
1軒10アンペアずつ出す家が20軒あれば、200アンペアをまとめてライブ会場に届けることもできる。コンピューターが自動で調整するから、20軒が同じタイミングで指令を出せばいい。
お金と違って、電気には「色」がついていない。でも自分が出した分だけ確かに誰かのところに届く。電力網の中では、私が出した電気と隣の人が出した電気は混ざってしまう。でも出した分と受け取った分の帳尻が合えば、それで届いたことになる。だから「色がついていない」んです。

5〜10年後、法律の壁をどう越えるか

いつごろ、私たちの生活に導入される未来が来ると思いますか?
5年から10年後でしょうね。大きなハードルとして「電気事業法の系統連系技術要件ガイドライン」という法律があります。今は個人が電力網に自由に電力を出し入れすることが制限されているんです。
この法律の見直しの中でGPIのような技術が認められれば、導入は一気に加速すると思います。今はそのための実証実験をしのぶ山テラスで行いながら、大手企業との連携も進めているところです。将来的には、アフリカや離島など、もともと電力インフラが整っていない地域での採用が先になるかもしれません。日本の法律の壁が高い分、「世界が先に採用する」という可能性も十分にある。


森田さんが目指すのは、「完全に再生可能エネルギーだけで自給自足する未来」なんでしょうか?
完全な自給自足じゃなくて、まずは、「自分の家で賄い、余剰や不足は近隣の友達と分け合い、天候不順のときは電力会社から予約購入する」世界です。
太陽エネルギーは石炭や石油と違って、何万年もかけてできた化石を200〜300年で掘り尽くすものじゃない。太陽の光はそこら中に降り注いでいる、完全な再生可能エネルギーです。それを「地産地消」できる仕組みを作れば、持続可能な社会が実現できると思っています。
私の夢は、「電力の全体主義」から脱却すること。自分でどうするかを判断できる、ボトムアップの電力社会です。

