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Uber初期投資家ジェイソン・カラカニスが日本の起業家に求める“大胆さ”

Global Startup EXPO 2026レポート記事です。

Uber初期投資家ジェイソン・カラカニスが日本の起業家に求める“大胆さ”

45分あれば、ソフトウェアが1本できる

「もう創業者にならない言い訳はない」。Uberへの初期投資で知られる米国のエンジェル投資家が、AI時代の起業をそう言い切った。

舞台となったのは、2026年10月5日から7日まで大阪の中之島とうめきたで開かれた「Global Startup EXPO 2026(GSE2026)」だ。GSE2026実行委員会が主催し、経済産業省が共催した、ディープテック領域のスタートアップイベントで、2025年に大阪・関西万博の会場で初めて開催され、今回が2回目となる。バイオ・ヘルスケア、量子、フュージョンエネルギー、宇宙、AI・先端ロボット、半導体・通信の6分野を重点に、国内外のスタートアップや投資家、事業会社が集まり、展示やピッチ、セッションが行われた。

最終日の10月7日、ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターでファイヤーサイドチャット「研究者たちが逃げ出すAI - それでもAIに資金は流れ続けるのか?」が行われた。登壇したのは、米LAUNCHのCEO兼創業者、ジェイソン・カラカニスさん。Uber、Robinhoodなど500社以上のアーリーステージ企業に投資してきた。聞き手は、カラカニスさんの起業家育成プログラム「Founder University」の日本展開をリードする、JETRO(日本貿易振興機構)の茨木彩月さんが務めた。

<LAUNCHのジェイソン・カラカニスさん、JETROの茨木彩月さん>

カラカニスさんは、自身ではコードを書かず、3つのAIエージェントにソフトウェアをつくらせていると明かした。試作品(MVP)なら、このセッションの45分のあいだにでも完成するという。

誰もが何かをつくれるようになれば、人の役に立たないプロダクトも大量に生まれる。それでも挑戦する人が増えれば、優れたプロダクトも増える。カラカニスさんはこれを、失敗を恐れがちな日本にとっての好機と見る。週末にこっそりつくって失敗し、平日は会社に行けばいい。100回失敗しても1回勝てば、人が覚えているのは勝ちだけだ。自分にも失敗は数えきれないほどあるが、それは教訓と呼ぶのだと話した。

暗闇で電灯のスイッチを探す

創業者に必要なものとして、カラカニスさんは立ち直る力、創造性、粘り強さの3つを挙げた。人は1、2回試してうまくいかないと、すぐにあきらめてしまう。東京で人気のスフレパンケーキも、つくった人は何度も生地をしぼませたはずだと例えた。

創業者であることは、真夜中に目を覚まして電灯のスイッチを探すのに似ているという。真っ暗な部屋でひざをぶつけ、つまずきながら手探りする。それでも部屋のどこかに、小さなスイッチは必ずある。見つけて押した瞬間、部屋のすべてが見えるようになる。

共同創業者も持つべきだと説いた。創業者の仕事は、突飛なアイデアを人に信じさせることだ。9割以上が失敗する旅に、最初の1人を誘えなければ、顧客や投資家を口説くのは難しい。100人に断られても、3人が「イエス」と言えばそれでいい。

ロボットに「脳」が入った

話題はAIマネーの行き先に移った。10〜20年前は、スタートアップがハードウェアをつくると言えば投資家は敬遠した。いまは回路基板の設計にもAIが使え、製造サービスに送れば手元に届く。ハードウェアはむしろ、事業を守る参入障壁とみなされるようになったという。

フィジカルAIが注目される理由を、カラカニスさんは「脳のないブリキ男」だったロボットに、大規模言語モデルという脳が入ったからだと説明した。かつての工場のロボットアームは、決められた動きを繰り返すようプログラムする必要があった。いまは荷物を仕分けてと目標を伝えれば、ロボットのほうが大きさ順か配送日順かと聞き返してくる。人手不足の日本の港湾がロボット化すれば、港の価値そのものが変わるとも話した。

国産フィジカルAIは「主権」の問題

ソフトバンク、ソニー、ホンダ、NECを中核に、国内企業が国産のフィジカルAI基盤モデルを開発するプロジェクト〔※1〕について、カラカニスさんは「日本が自前でモデルを持つのは良いことだ」と評価した。いまソフトウェアづくりで起きている変化は、2〜3年後にはハードウェアでも起きる。危険できつい肉体労働はロボットが担うようになり、高齢化が進む日本はその最適な実験場になるという。

大型の官民連合で挑むべきか、スタートアップか、という問いには「両方だ」と答えた。モデルを他国から買うだけでは、提供を止められたり値上げされたりするリスクを抱える。米国が半導体やレアアースの調達で直面したのと同じ問題だ。たとえ世界5位のモデルでも、自前で持つことに意味がある。一方で、建設や解体など領域ごとに専門のスタートアップが育つ多様性も欠かせないと述べた。

日本に足りないのは「大胆さ」だけ

最後に茨木さんは、日本の起業家への率直な評価を求めた。カラカニスさんは、日本には「カイゼン」と誇りが文化として根づいていると話す。米国ではわざわざ教える必要があるプロダクトへのこだわりを、日本人は家族や教師、駅員の姿から自然に身につけているという。1999年の初来日の際は、築地市場への行き方がわからず困っていると、地元の人が電車に乗せ、車掌に行き先まで伝えてくれた。

足りないのは、リスクを取ること、断られても少し押すこと、そして率直に批判し合うことだという。満員電車に乗り込むときの押しの強さを、投資家への売り込みにも使えばいいと会場に呼びかけた。腕のグランドセイコーを例に、日本のものづくりは世界のトップクラスだと繰り返し、島の外の市場を取りに行ってほしいと締めくくった。

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取材・文・撮影:DEEPPOINT編集部

※1 2026年1月7日に設立された「日本AI基盤モデル開発」(現Noetra)。経済産業省は2026年6月30日、同社と産業技術総合研究所をフィジカルAI基盤モデル開発事業の実施予定先に選定した。同事業の2026年度予算は3,873億円で、2030年度までの5年間で総額1兆円規模を支援する方針

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