※本記事は、リミックスポイント公式YouTubeチャンネル「リミちゃんねる」の対談動画・後編をもとに、発言の言い淀みや重複を整理・再構成したものです。発言は収録時点のものです。
発電した電気を遠くへ運ぶのか。それとも、電気を大量に使う設備を発電所の近くへ置くのか。AIデータセンターの増加は、電気のつくり方だけでなく、使う場所の選び方にも問いを投げかけている。
前編に続き、リミックスポイント顧問の石川和男氏と同社取締役の原田浩志氏が、AI時代の電力需要、電気代の「見える化」、そして固定価格買取制度(FIT)の期間を終えた太陽光発電所をどう使い続けるかを話し合う。
電気を運ぶより、使う場所を近づける
電力や蓄電、太陽光のパネルから送電まで、技術はどんどん更新されていますよね。もう一つ面白いと思うのが、AIデータセンターと電力の関係です。データセンターは増えている一方で、電気が足りない。再エネでつくった電気を使いきれず、遠くへ送るにも大きなお金がかかります。
例えば日本でも、北海道で発電して、需要は東京にある。では、どうやって電気を運ぶのか。一つの案として、発電する場所の近くにAIデータセンターを置いて、そこで電気を使う。AIのサービスはクラウドを通じて届ければいい、という考え方があります。
それは非常に重要です。電力が自由化される前は、電力会社に供給義務があって、需要があるところには、どんなに遠くても電線を引かなければならなかったんですよ。今のお話は逆なんです。そんなことをしていたら、時間もお金もかかるから、使う側が発電する場所へ行く。デマンドレスポンスと発想は一緒ですよね。電気を運ぶより、運ばないほうがいい場合もある。物流を逆さにするようなものです。
AIデータセンターの制約は、電力と冷却にある
本当に逆転の発想ですよね。クラウドが広がり始めたころと今のAIでは、データセンターの求められるものが違うと思います。当時はコストパフォーマンスがよくて、省電力の設備が重視されていました。今はNVIDIAのH100やB200、B300といった機器を使うと、大きな電力を消費します。冷却も、空冷だけではなく水冷を組み合わせるようになっています。
発電所の近くにデータセンターをつくるにしても、電力とのバランスや制度上の制約があります。一方で、北海道の苫小牧のように誘致を進めている地域もあります。場所と電力を使える環境が整えば、AIのスタートアップや企業の投資につながるかもしれない。使いきれない電気をどう生かすか、という話ともつながります。
日本でも、データセンターによって電力需要が増えるという見通しが出ています。東京電力のエリアで、2033年ごろには約800万キロワットという話もある。大型の原子力発電所を1基100万キロワットとすると、8基分に相当する規模です。それだけの電気をどう確保するか、という問題があります。
同時に、そんなに電気を使わないデータセンターの技術も必要です。例えば冷却ですよね。冷却に使う電気を減らせれば、その分だけ必要な電源も減ります。データセンターが足りなければ、デジタル化もその分遅れる。冷却技術は、今から試していかなければいけないところだと思います。投資のテーマとして考えても、まだ見つかっていないものがいろいろあるはずです。
電力はインフラの基本なので、これまであまり意識されてこなかったのかもしれません。AIのアプリが広まるほど、どうやって電気を節約しながら便利なサービスを使うかに目が向きます。冷却や発熱しにくい半導体、核融合のように発電量を大きく増やす技術も含めて、AIの周りに新しい領域が出てくると思います。
ガソリンの値段は見えるのに、電気は見えない
AIはいったん進化し始めたら、止まらないと思うんです。進む以上、電気は必要になります。では、どうして私たちは電気の値段をあまり意識しないのか。電気の料金は公表されています。でも、みんな見に行かないですよね。一方でガソリンの値段は、ガソリンスタンドに書いてあるから、みんな知っています。
今、この部屋でも電気を買って使っているわけです。でも、この瞬間の電気の価格は分からない。情報がまったくないのではなく、目に入る形になっていないんです。スマホやパソコンの画面で「今は安い」「今は高い」と分かれば、デマンドレスポンスも広がると思います。蓄電池に貯めた太陽光の電気を、いつ使うか、いつ売るかという判断にもつながりますよね。これはディープテックの分かりやすい一端だと思いますし、これからやるべきことです。
NISAと一緒なんですよ。少額投資でしょう。株の投資は、何百万円もないとできないと思われがちでした。でも、少額から始められるようになって、身近になりましたよね。電気も同じだと思うんです。今まで一般の人が知らなかった情報をスマホで見られるようにして、それを小遣い稼ぎにつなげる。そうすると広がると思います。
お小遣い稼ぎやポイ活のように、少しゲーム感覚になるということですよね。例えば、電気が高いときにはスマホの充電を少しずらしてみる。もっと効率のいい使い方を、個人向けのAIが支えてくれるかもしれません。電気を切り替えるスイッチや、そのための仕組みも必要になってくると思います。
人は、どうすれば自分の暮らしが少し潤うかに関心があります。それが市場の原点だと思うんです。電力の話は、1日で何千万円ももうかるというものではありません。でも、小さなお金が少しずつ増える仕組みなら、一般の人にも受け入れられやすい。そこにリミックスが入っていくことで、会社の名前も知ってもらえると思います。
ディープテックと言うと、難しく感じるかもしれません。でも「スマートフォンをいつ充電するか」「家の電気をどう使えば少し得になるか」というところまで具体的にすると、自分でも試してみたくなりますよね。DEEPPOINTでも、そういう身近な入口から分かりやすく解説しながら、専門性の高い方々がなぜその領域に取り組んでいるのか、政策がどちらへ向かっているのかを伝えていきたいと思っています。
屋根の太陽光と蓄電池に、まだ余地がある
石川さんが、リミックスに重点的に取り組んでほしいテーマはありますか。
日本の再生可能エネルギーは、もう後退しないと思います。太陽光で環境への影響が問題になり、大規模な新規開発が難しくなる部分はあります。でも、それはその部分の話なんです。家の屋根は、まだたくさん空いています。そこに太陽光を載せて、蓄電池も入れる。
今はFITやFIPに蓄電池を組み合わせる方向へ、政策が誘導されています。これは規制ですから、反対する必要はまったくない。乗ったほうがいいんです。乗って伸ばしていけばいい。「FIPと蓄電池ならリミックスポイント」と思い浮かべてもらえる立ち位置に、どう立つかですよね。PRも含めて、そこに力を入れてほしいと思います。日本のように国産の燃料がない国では、再エネは後退しませんから。
家庭用の太陽光や蓄電池は、一度広がりましたが、街を見ると、屋根にパネルが載っている家はまだ少ないですよね。EVが普及すれば、車を家庭の蓄電池として使うことも考えられます。蓄電をもっと身近にして、若い世代も電気代を下げたり、電気を面白がって試したりできるといいなと思います。
買取期間の後も、発電所を使い続ける
もう一つ、対になる話があります。2012年に始まったFITでは、太陽光の買取価格が高く設定されて、設備も増えました。ただ、事業用太陽光の買取期間は20年です。期間が終わったあと、事業者が発電をやめて設備を放置してしまったら、もったいないですよね。
だから、FITでつくられたメガソーラーの事業者や所有者を、これから集約していくことも考えなければいけない。すでに電線がつながっているのですから、パネルを更新するなどして、そこで発電を続けられます。リミックスポイントがそれを担うのかは分かりませんし、株主の皆さんの意見も聞きながらですが、どの立ち位置で関わるのか、今から考えておくことが大事だと思います。
面白いですね。
そのほうが太陽光の発電量も維持できます。やめて草が生い茂ったままにするのは、もったいない。発電所として使い続けて、もっと効率のいいパネルに替え、バッテリーも入れる。そうすれば電気を安定して供給しやすくなるし、出力制御も今より減らせるかもしれません。買取期間が終わるまでは、まだ数年あります。じっくり考える時間はあるんです。
一方で、発電所の近くにデータセンターをつくるなら、計画から完成まで時間がかかります。コンテナ型でも1年、2年はかかるかもしれません。
データセンターについては、5年先では長いですね。今の環境で、1、2年先を見て動かないと進まないと思います。
そうですね。投資が集まっているものは今追いかける。一方で、買取期間を終えた太陽光発電所をどう使い続けるかは、準備しておく必要があります。20年で投資を回収し終えて、なるべくコストをかけずに撤退したい事業者も多いはずです。電力と蓄電をやってきたリミックスが、発電所の事業者とつながる。そのために、メディアでの取材から新しい事業の相手や研究開発の連携が生まれるといいなと思っています。それが、私がこの事業をやりたいと考えている理由です。
まずはコアのエネルギーから、次の挑戦へ
今日はエネルギーの話でしたが、私の専門には社会保障もあります。社会保障経済研究所もやっていますし、資金をどう役立つところへ回すか、という話には奥行きがあります。また機会があれば話したいですね。
社会保障には、データやセキュリティの問題もありますよね。「このデータをChatGPTに入れていいのか」「何をもって安全と言えるのか」と、AIが出てきたことで議論が始まった。技術に100点はないと思います。変わり続けるものを追いながら、分かりやすく伝えていきたいです。
リミックスポイントの魅力は機動力だと思います。いろいろなことに挑戦できますが、まずはコアであるエネルギーです。私も専門の一つですから、株主や投資家の皆さんの利益につながるように頑張りたいと思います。
デマンドレスポンス(DR):電気を使う側が使用量や時間を調整し、需要のパターンを変えること。
FIT:再生可能エネルギーの電気を、一定の価格・期間で買い取る制度。事業用太陽光には原則20年の調達期間がある。
FIP:再エネの電気を市場で売り、その売電収入に一定のプレミアムを上乗せする制度。
卒FIT:FITの固定価格での買取期間が終わること。事業用太陽光と住宅用太陽光では期間や満了時期が異なる。
出力制御:電気の供給が需要を上回るおそれがあるとき、安定供給のために発電量を抑えること。
編集:DEEPPOINT編集部/出典:リミちゃんねる(株式会社リミックスポイント)

