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ElevationSpaceの回収衛星は、海外のカプセルと何が違うのか

宇宙で作った物を地上へ持ち帰る小型の再突入カプセルは、米国と欧州の企業が先に飛ばしている。東北大学発のElevationSpaceが開発する回収衛星「あおば」は、それらと何が違い、その違いがどこで効くのかを、海外の帰還の実績と並べて整理する。

ElevationSpaceの回収衛星は、海外のカプセルと何が違うのか

国際宇宙ステーション(ISS)は、2030年末で運用を終えることが決まっている。 宇宙で作った物を地上へ持ち帰る小型の専用カプセルは、米国と欧州の企業が先に飛ばしている。 仙台市のElevationSpaceも同じ目的の回収衛星を開発しているが、初号機はまだ打ち上がっていない。 後から来た日本の回収衛星は、海外のカプセルと何が違うのか。

この記事でわかること
  • 解こうとしているのは、宇宙で作った物を持ち帰る手段が少なく、日本では回収地点が国外に限られていることである
  • ElevationSpaceの初号機「あおば」は、無人の衛星の中で作った物をカプセルで日本近海へ戻すことを目指している
  • 海外では米国のVardaが帰還を繰り返しているが、ほかの2社はカプセルを回収できていない
  • 違いが効くのは帰還先で、帰還の実績ではまだ比べられない
用語解説

微小重力:重力の影響がほとんど感じられない状態。宇宙ステーションなどの軌道上で得られる。

再突入:宇宙から大気圏に戻ること。高い熱と大きな減速に耐える必要がある。

揚力誘導:カプセルの姿勢を変えて揚力を生み、降りる経路を制御する方法。

ハイブリッドスラスタ:固体の燃料と、液体や気体の酸化剤を組み合わせるロケットエンジン。

詳細設計審査(CDR):設計が固まったかを確かめる審査。通ると実機の製造に進む。

宇宙戦略基金:宇宙分野の技術開発を支える国の基金。JAXAが運営する。

ライドシェア打上げ:1機のロケットに複数の衛星を相乗りさせて打ち上げること。

何を解こうとしているのか

ElevationSpaceが挙げる課題は、宇宙で作った物を持ち帰る手段の少なさである。 同社の説明では、これまでの手段はISSに往復する有人宇宙船などに限られ、ISSから地上へのサンプル輸送は年に3〜4回程度だった。 日本の場合は、回収地点も国外に限られている。 同社は、ISSの運用終了を事業の背景に挙げている。

ElevationSpaceの回収衛星はどう帰ってくるのか

同社の回収衛星は、作ることと持ち帰ることを1機で行う。 「ELS-R」は、無人の小型衛星の中で実験や製造を行い、その成果物を再突入カプセルに入れて地球へ戻す仕組みである。

回収衛星あおばが物を持ち帰る流れ。衛星内で実験や製造、成果物をカプセルへ、大気圏に再突入、日本近海で回収。初号機は未打上げで、どの工程もまだ宇宙で実証されていない

初号機「あおば」は220kg級で、再突入カプセル、再突入用のエンジン、衛星本体を自社で開発している。 会社が中核技術に挙げるのは「日本独自の小型揚力誘導技術」である。 再突入用のエンジンはハイブリッドスラスタで、東北大学とJAXAとの共同研究で開発し、2024年3月には実機に近い試験モデルの燃焼試験に成功した。 再突入と回収の経験は人材で補っており、CTOはJAXAで再突入と回収の研究開発に20年以上携わり、技術顧問にはJAXAでHTVに載せた小型回収カプセルの開発を主導した人物が就いている。

もう1つの方式として、宇宙ステーションから高い頻度で物資を回収する「ELS-RS」も開発している。 2025年11月に宇宙戦略基金の「高頻度物資回収システム技術」で代表機関に採択され、HTVの小型回収カプセルの技術と自社衛星の技術を組み合わせる計画である。

帰還先は日本近海を目指している。 会社は、国内で回収できる能力を持つことを、日本の宇宙開発の自立性につながるものと位置づけている。

海外のカプセルは何回帰ってきたか

先に飛んだ海外のカプセルは、結果が分かれている。

社名国機体帰還の実績帰還の場所
Varda Space Industries米国宇宙製造カプセル(Wシリーズ)12か月足らずで3回帰還(3回目は2026年1月)南オーストラリアの試験場
The Exploration Company欧州実証カプセル(Mission Possible)2025年6月に制御された再突入を果たしたが、着水の直前にカプセルを喪失海上(次は大型カプセルNyx Earthを2028年に飛ばす計画)
Inversion Space米国実証機Ray軌道上の不具合で再突入を試みられなかった情報なし
ElevationSpace日本回収衛星あおば(ELS-R)未打上げ(2026年6月に詳細設計審査を完了し、組立中)日本近海を目指す

この中で帰還を繰り返せているのはVardaだけで、ほかの2社は再突入か回収の段階でつまずいている。

違いが効く場面と、まだ効かない場面

違いが効くのは、帰還先である。 あおばが日本近海に帰れば、日本の研究者や企業は、国外の回収地点に頼らずに成果物を受け取れる。 ここは、南オーストラリアに降りるVardaとは条件が違う。

一方で、帰還の実績ではまだ比べられない。 あおばの打上げは2027年以降とされ、2024年3月の燃焼試験の発表では、無人小型衛星の打上げを2025年に予定していた。 打上げの契約は2件あり、あおばはIsar Aerospaceのロケット「Spectrum」で、2号機は三菱重工業のH3ロケットのライドシェアで2027年に打ち上げる予定である。 公表されている打上げの機会は、2027年以降の2回である。 海外でも回収できていない例がある以上、再突入と回収を一度成功させるまでは、実績の面で並ぶことはない。

まだ分からないこと

あおばの打上げ時期と、再突入と回収が成功するかどうかは、まだ分からない。 日本近海への帰還に必要な宇宙活動法の許可などの取得状況も公表されておらず、帰還先という違いが実現するかは、この許認可にもかかっている。

編集部の見立て

ElevationSpaceの回収衛星が海外のカプセルと違うのは、日本近海へ帰すことを目指している点で、帰還の実績ではまだ比べられない、と編集部は見る。 帰還先の違いが意味を持つのは、あおばが実際に帰ってきてからである。 海外でも回収に失敗した例がある以上、最初の帰還の結果が、その違いを確かめる最初の材料になる。

会社のデータ
  • 社名:株式会社ElevationSpace
  • 設立:2021年2月
  • 所在地:宮城県仙台市
  • 代表:小林稜平(代表取締役CEO)
  • 分野:宇宙
  • 出身:東北大学。宇宙ロボットを研究する吉田・桒原研究室が開発してきた小型衛星(10機以上)の技術がもと。共同創業者の桒原聡文氏は東北大学の教授
  • 製品:ELS-R(初号機あおばは組立中、打上げは2027年以降にIsar AerospaceのSpectrumで。2号機は三菱重工業のH3ライドシェアで2027年の予定)、ELS-RS(宇宙ステーションからの高頻度回収。2025年11月に宇宙戦略基金の代表機関に採択)
  • 提携:Axiom Space、Space Cargo Unlimited、Aegis Aerospaceと基本合意書(MoU)、Redwireとは技術を統合する計画を発表。商業契約は公表されていない
  • 調達:DEEPPOINTスタートアップDBの開示分の合算は92.4億円(5件。プレシード0.3億円、シード3.1億円、シリーズA14億円(公表は14億円超)、プレシリーズB11億円、シリーズB64億円)。会社が公表する累計は101億円で、差の内訳は公表されていない
  • 企業価値:INITIALの推定値(調達後評価額、2026年6月時点)では約143億円。会社や投資家の公表値ではない
  • 公式サイト:elevation-space.com
  • スタートアップDB:/startups/elevation-space
この記事について

この記事は、DEEPPOINTのスタートアップDBの調書と、同社のリリース、大学の発表などの公開情報をもとに編集部が作成した。 企業価値の推定値は INITIAL(initial.inc)による。 サムネイルには同社公式サイトの画面を使った。 主な出典は、同社サイトの会社情報とあおばのページ、同社リリース(2025年11月14日、2026年6月19日、2026年9月14日)、東北大学の発表(2024年3月)、Varda の帰還に関する南オーストラリア州の発表、The Exploration Company の発表、Inversion Space の Ray に関する記録 である。 この記事は投資判断を推奨するものではない。 内容の訂正の依頼はお問い合わせから受け付けている。

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