アドバンスコンポジットは、アルミなどの金属にセラミックスやグラファイトを組み合わせた複合材料を作る、静岡県富士市の会社である。 製法の核にある溶湯鍛造法は、会社の説明では1970年代ごろから自動車部品などで実用化されたものの、本格的には普及しなかった。 同社はこの製法で、半導体製造装置、自動車、エアコンの分野で量産を実現していると説明している。 一度は広まらなかった製法は、どうしてこの会社の製品になったのか。
- 溶湯鍛造法は緻密な材料を作れる製法で、会社の説明では手間とコスト、加工のしにくさ、歩留まりの問題で広まらなかった
- 同社は強化材を繊維から粒子に替えるなど、作りやすさを上げる工夫を特許とノウハウにしたと説明している
- 量産と販売の具体例が公表されているのは治具などの素材で、放熱材の量産の状況と性能の第三者測定は公表されていない
金属基複合材料(MMC):アルミなどの金属を母材に、セラミックスなどの強化材を組み合わせた材料。
加圧含浸:圧力をかけて、溶けた金属などを多孔質の材料のすき間に染み込ませること。
歩留まり:作った製品のうち、良品として使えるものの割合。
熱伝導率:熱の伝わりやすさ。大きいほど熱を逃がしやすい。
熱膨張率:温度が上がったときの伸びやすさ。小さいほど寸法が変わりにくい。
治具:加工や組立のときに、部品を決まった位置に固定する道具。
出発点の製法と、広まらなかった理由
出発点にあるのは、溶湯鍛造法という古い製法である。 溶かした金属を金型に入れ、高い圧力をかけて固める。 比較的短い時間で固めるため、組織が緻密になり、内部の微細な空洞(鋳巣)が少ない。 複合材料を作るときは、強化材で多孔質の型(プリフォーム)を作り、そこへ溶けたアルミなどを高い圧力で染み込ませる。
会社の説明では、この製法が広まらなかったのは、手間とコスト、複合材料の加工のしにくさ、歩留まりの問題があったからである。 ただし、金属を加圧して染み込ませる複合材そのものは、ほかの会社も量産している。 米国のCPS Technologiesは炭化ケイ素にアルミを加圧含浸するAlSiCを作り、国内ではデンカがアルミとセラミックスの複合放熱ベース板を電鉄向けに供給している。 会社の言う「普及しなかった」は、溶湯鍛造法で複合材を作る事業を指すと読める。
作りにくさをどう越えたか
同社が変えたと説明しているのは、強化材の形と製造の条件である。 軽くて硬い複合材「AC-Albolon」では、強化材のホウ酸アルミニウムを、繊維状のものから平均粒径40マイクロメートルの粒子に替えた。 粒子にしたことでプリフォームを作りやすくなり、配合やプレスの条件の工夫とあわせて、特許とノウハウにしているという。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1970年代ごろ | 溶湯鍛造法が自動車部品などで実用化される(会社の説明) |
| 2015年7月 | 静岡県富士市で設立 |
| 2019年度 | AC-Albolonの開発が、中小企業庁の戦略的基盤技術高度化支援事業に採択 |
| 2021年2月 | AC-Albolonの成形で、粒子充填法に加えて沈降法とプレス法の国内特許の取得を発表 |
| 2021年9月 | 中国での特許の取得を発表。同じ発表で、大量生産の要望にすべて応えるのは不可能とし、提携先との連携を掲げる |
| 2023年11月 | 溶湯鍛造による金属基複合材料と接合製品の開発と製造で、ISO 9001の認証を取得 |
| 2026年9月 | 放熱材の新製品ACM-H6を展示会に出展 |
技術の出発点となった研究は、はっきりしない。 会社は「多くの研究機関や大学と共同研究を進めてきました」と書くが、大学名は出していない。 2026年に出資した京都大学イノベーションキャピタル(京都iCAP)も、同社を国立大学の研究成果を活用するスタートアップと紹介しているが、どの大学かは示していない。
今どこまで来たか
製品として量産と販売の具体例が公表されているのは、AC-Albolonを使った高精度の位置決め治具やリフロー治具などである。 ヒーター線や水冷管をアルミでくるむ鋳ぐるみ品や、半導体製造装置用の冷却部品などの接合品も売っている。
放熱材は、グラファイトにアルミを染み込ませた複合材である。 会社はACM-H1とH2の熱伝導率を460W/m・K以上、熱膨張率を約5ppm/Kと公表しているが、量産の状況も、第三者による性能の測定も公表されていない。 放熱材については、DEEPPOINTの放熱材と台湾展開のインタビューでも取り上げている。
供給の量は、まだ課題として残っている。 環境エネルギー投資の追加出資を伝える2026年の発表では、資金の使い道を生産能力と供給体制の強化、設備の増強、品質保証体制の整備としている。
まだ分からないこと
粒子化などの工夫で、歩留まりやコストがどれだけ改善したかは公表されていない。 放熱材の量産の状況と、第三者による性能の測定も公表されていない。 これらが公表されれば、作りにくさを越えたという会社の説明を、外から確かめられるようになる。
編集部の見立て
普及しなかった鋳造法がこの会社の製品になったのは、会社の説明に従えば、強化材を粒子に替えるなど作りにくさを下げる工夫を重ね、それを特許とノウハウにしたからだ、と編集部は見る。 治具などの素材では量産と販売の例が公表されている。 放熱材でも同じ説明が成り立つかは、量産の実績と第三者の測定が出てから判断できる。
- 社名:アドバンスコンポジット株式会社
- 設立:2015年7月
- 所在地:静岡県富士市
- 代表:服部淳一(代表取締役社長)
- 分野:素材・化学
- 特許:国内54件(gBizINFO経由の特許庁データ、2026年10月1日時点)
- 設備:第2工場に3000トン規模から300トン規模まで5種類の高圧プレス機(日刊工業新聞の報道)
- 出身:大学名は公表されていない(京都iCAPは「国立大学の研究成果を活用するスタートアップ」と紹介)。産業技術総合研究所と共同研究
- 製品:AC-Albolon(量産、販売中)、鋳ぐるみ品、接合品、溶湯鍛造アルミ部材(販売中)、放熱材ACM-H1/H2/H6(公表、出展)、鉛を使わない放射線遮蔽材(段階は非公表)
- 調達:DEEPPOINTスタートアップDBの開示分の合算は17億円(5件のうち金額の分かる2件。2024年の15億円と、京都iCAPが公表した約2億円)。会社が公表した累計は見当たらない
- 企業価値:INITIALの推定値(調達後評価額、2026年8月時点)では約145億円。会社や投資家の公表値ではない
- 公式サイト:advance-composite.co.jp
- スタートアップDB:/startups/advance-composite
この記事は、DEEPPOINTのスタートアップDBの調書と、同社のリリース、報道などの公開情報をもとに編集部が作成した。 企業価値の推定値は INITIAL(initial.inc)による。 サムネイルには同社公式サイトの画面を使った。 主な出典は、同社リリース(2020年4月、2020年8月、2021年2月、2021年9月、2024年11月、2026年9月)、京都iCAPの発表、日刊工業新聞 ニュースイッチ、KDDI MUGENLABO Magazine、THE BRIDGE(2026年7月)、MONOist(2026年9月)、同社の会社情報 である。 この記事は投資判断を推奨するものではない。 内容の訂正の依頼はお問い合わせから受け付けている。

