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Craifの尿がん検査は、薬事承認を取ると何が変わるのか

尿のマイクロRNAでがんのリスクを調べるCraifは、自費の検査を広げながら、すい臓がんの診断補助プログラムで薬事承認を目指している。臨床試験の経過をたどりながら、承認の前と後で、同じ技術から言えることがどう変わり、何が変わらないのかを整理する。

Craifの尿がん検査は、薬事承認を取ると何が変わるのか

尿でがんのリスクを調べる検査は、すでに医療機関や薬局で受けられる。 Craif(クライフ)の「マイシグナル」はそうした検査の1つで、導入先を広げてきた。 ただしこの検査は医療機器ではなく、診断の代わりにはならないと会社自身が明記している。 同じ技術で医療機器としての承認を取ると、何が変わるのか。

この記事でわかること
  • 承認に向けて、2026年9月に臨床試験の症例登録を終え、医療機器の製造販売業の許可も取得した
  • 承認の前のマイシグナルは自費のリスク検査で、利用は広がったが、診断の代わりにはならない
  • 承認で加わるのは、すい臓がんのハイリスク患者を診る医師が使う診断補助という用途である
  • 承認を目指すのはすい臓がんの診断補助だけで、マイシグナルの位置づけを変える計画は示されていない
用語解説

マイクロRNA:細胞の中で遺伝子の働きを調節する、短いRNA。

細胞外小胞:細胞が外に放出する、膜で包まれた小さな粒子。中にマイクロRNAなどを含む。

SaMD(プログラム医療機器):ソフトウェアそのものが医療機器として扱われるもの。販売には承認などが要る。

ピボタル試験:承認申請の根拠にするため、性能や有効性を確かめる中心の臨床試験。

AUC:検査が病気の人とそうでない人をどれだけ正しく分けられるかを示す指標。0.5は当て推量と同じで、1に近いほど正確。

感度と特異度:感度は病気の人を陽性と判定できた割合、特異度は病気でない人を陰性と判定できた割合。

第一種医療機器製造販売業:医療機器を市場に出す責任を負う事業者に必要な許可のうち、リスクの高い医療機器まで扱えるもの。

承認に向けて何が進んでいるのか

承認に向けては、2026年の夏から秋にかけて臨床試験と許可という2つの節目があった。

1つ目は臨床試験である。 承認に必要な性能を確かめるピボタル試験で、Craifは9月17日に、性能評価に必要な症例数の登録と検体の収集を終えたと発表した。 会社は2026年中に承認を申請し、2027年に承認を得ることを目標にしている。

2つ目は許可である。 8月3日付で、医療機器を市場に出すための第一種医療機器製造販売業の許可を東京都から得た。

承認までの道のり。2022年にマイシグナル開始、2024年10月に試験計画を公表、2026年8月に製造販売業の許可、9月に症例登録完了、2026年中に申請、2027年に承認が会社の目標

すい臓がん診断補助プログラムの模式図(同社リリースより)

承認の前、マイシグナルは何を言えるのか

承認の前のCraifの姿は、自費のがんリスク検査「マイシグナル」である。 2022年に始まり、医療機関、ドラッグストア、EC、企業の福利厚生、自治体の公費助成を通じて受検者に届く。 2026年7月には導入医療機関が2,500軒を超え、8月の時点では薬局などの取り扱いが4,700以上、累計の利用が11万件以上と公表されている。 同年4月には島根県美郷町が公費補助による導入を始めており、会社によると全国で初めての例である。

広がりの一方で、この検査が言えることは限られている。 会社はマイシグナルシリーズについて、医療機器ではなく、診断の代わりにはならないと明記している。 利用が増えても、それは使われている事実であって、判定が正しいことの証明にはならない。

承認で加わること

承認で加わるのは、医師がすい臓がんのハイリスク患者に使う診断補助という用途である。 尿のマイクロRNAをAIで解析する点はマイシグナルと同じだが、使い手は受検者ではなく医師になる。

同じ技術から出る2つの製品。尿の検体から細胞外小胞のマイクロRNAを測りAIで解析し、自費のマイシグナルと、承認を目指すすい臓がん診断補助プログラムに分かれる

これまでに公表された性能値は、ピボタル試験とは別の研究から出ている。

研究対象公表された性能留意点
eClinicalMedicine(2024年)すい臓がん(ケースコントロール研究)AUC 0.972(学習)、0.963(テスト)Craifが研究デザインとデータ解析に関与
Frontiers in Oncology(2026年)すい臓がんのハイリスク群AUC 0.89、感度0.80、特異度0.79ハイリスク群に絞った研究
ピボタル試験承認申請に向けた性能評価未公表2026年9月に症例登録を完了

ケースコントロール研究は、がんと分かっている人と健康な人を集めて比べる研究で、実際に検査を使う場面の患者とは集団が異なる。 2026年の研究はハイリスク群に対象を絞っており、診断補助の使い手が診る患者に一歩近い。 承認に向けた性能評価そのものは、ピボタル試験の結果にかかっている。

承認でも変わらないこと

承認を目指しているのは、すい臓がんの診断補助プログラムだけである。 マイシグナルについて、会社は医療機器ではないと明記しており、その位置づけを変える計画は示されていない。 承認の前後を並べると、加わるものと変わらないものは次のようになる。

項目承認の前承認の後変わらないもの
製品自費のマイシグナルすい臓がんの診断補助プログラムが加わるマイシグナルは医療機器ではない検査のまま
使い手一般の受検者ハイリスク患者を診る医師が加わる受検者に届く経路
言えることがんのリスクの評価(診断の代わりにはならない)すい臓がんの診断の補助測るのは尿のマイクロRNA

まだ分からないこと

ピボタル試験の結果は、まだ公表されていない。 会社は2024年10月の時点で、試験終了の見込みを2025年12月としていたが、2026年9月の時点で公表されているのは症例登録の完了までである。 結果がいつ、どの形で公表されるかによって、承認の見通しも、外から性能を確かめられる範囲も変わる。 申請と承認の時期は、会社の目標値にとどまる。

編集部の見立て

承認で変わるのは、マイシグナルではなく、同じ技術に「医師がすい臓がんの診断に使う」という用途が加わることだ、と編集部は見る。 自費の検査の広がりは利用の実績を示すが、診断に使えることの根拠にはならない。 その根拠を外から確かめる最初の材料が、ピボタル試験の結果になる。

会社のデータ
  • 社名:Craif株式会社(2018年5月にIcaria Inc.として創業し、2020年6月に商号変更)
  • 所在地:東京都新宿区
  • 代表:小野瀨隆一(代表取締役CEO)
  • 分野:医療・バイオ、AI
  • 出身:名古屋大学。共同創業者で技術顧問の安井隆雄氏(名古屋大学大学院工学研究科 教授)のナノワイヤ研究と、Science Advances(2017年)の論文が基盤
  • 特許:国内9件(gBizINFO経由の特許庁データ、2026年10月1日時点)
  • 米国:2026年4月にサンディエゴで自社ラボを開き、CEOが移住。CLIA認証の取得が欠かせないと説明し、8月にCMOを迎えた。保険償還を見据えて15州30の医療機関と連携
  • 製品:マイシグナル・スキャン、マイシグナル・ライト(上市済)、miAge(2026年9月に先行販売)、すい臓がん診断補助プログラム(承認申請の準備中)
  • 調達:DEEPPOINTスタートアップDBの開示分の合算は89.2億円(9件のうち金額の分かる4件。2022年の融資は借入限度額の15.2億円、2026年8月のシリーズDはセカンダリー取引を除く44億円で計上)。会社が公表する創業以来の累計は約142億円で、出資、融資、助成金を含む
  • 企業価値:INITIALの推定値(調達後評価額、2026年7月時点)では約260億円。会社や投資家の公表値ではない
  • 公式サイト:craif.com
  • スタートアップDB:/startups/craif
この記事について

この記事は、DEEPPOINTのスタートアップDBの調書と、同社のリリース、論文などの公開情報をもとに編集部が作成した。 企業価値の推定値は INITIAL(initial.inc)による。 本文の画像は同社リリース(2026年9月17日)から引用した。 主な出典は、同社リリース(2026年8月18日、2026年9月17日、2024年10月31日、2026年7月23日、2026年4月2日、2026年8月18日 CMO就任)、eClinicalMedicine(2024年)、Frontiers in Oncology(2026年) である。 この記事は投資判断を推奨するものではない。 内容の訂正の依頼はお問い合わせから受け付けている。

この記事に登場する企業

  • Craif尿中のマイクロRNAをAIで解析し、自覚症状のない段階でがんのリスクを評価する検査「マイシグナル」を提供する名古屋大学発スタートアップ。全国の大学病院・研究機関との共同研究を進め、すい臓がんの早期発見に向けた医療機器開発にも取り組む。

    医療・バイオ·シリーズD以降·累計¥89.2億·名大発·ANRI·大和企業投資 ほか13社

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