※本記事は茶谷公之さんのnote記事を許諾を得て再掲載したものです。本文は原文のまま、見出し・サムネイル画像のみ編集部で再構成しています。「第1章:想像力と妄想力〜不連続な時代を生き抜く鍵〜」より、「想像力・妄想力を高めるための5つの視点」を紹介。本記事では2つ目の視点を抜粋して掲載します。
出典:https://note.com/oc_publishing/n/n193661fac236
想像力・妄想力を高めるための5つの視点
2.地政学は大きな動きを知る入り口
SFや「もしも」の世界に飛び込むことで、時間軸や前提が変われば常識が変わることを体感できます。その延長線上にあるのが、「地政学」です。地政学は一見テックとは遠いテーマに思えるかもしれません。しかし、マクロな動きを俯瞰して考える視点を身につけるうえで、これほど刺激的な題材はありません。そして、地政学は想像力・妄想力を高めるアプローチの一つなのです。
なぜテックリーダーに「地政学」なのか
地政学とは、地理と政治・経済の関係を読み解く学問です。エネルギー、資源、気候変動、サプライチェーンなど、国家間の動きは企業活動に深く影響します。
時にこれらの獲得競争が国家間の大きな議論や衝突になっているのは、まぎれもない事実です。
自動車の保有台数ひとつとっても、米国は人口千人当たり900台保有しているのに対し、インドはまだ37台。しかしこの差が加速的に縮まることが予想されています。
では、この差が縮まっていくとき、資源や環境はどうなるのか。もし世界中が同じレベルの消費に達したら、どのような産業構造や政策が必要になるのか。
こうした大きな視点は、日々の技術判断を飛び越え、未来の市場や規制を想像するうえで欠かせない練習になります。「今ある条件が前提のままで続く」と無意識に考えてしまう思考を、一度外してみること。これこそがテックリーダーに求められる柔軟な発想につながります。
書籍とコミックから“マクロの物語”を学ぶ
この分野の名著として、ダニエル・ヤーギン氏の『新しい世界の資源地図 エネルギー・気候変動・国家の衝突』があります。
ピューリッツァー賞受賞作『石油の世紀』に続く本書は、エネルギーと資源をめぐる国家間の争いがどのように経済や産業を動かしているかを描き出しています。こうした本を読むことで、テックリーダーは技術を超えた“産業全体の物語”を感じ取ることができます。
一方、日本のコンテンツの豊かさも見逃せません。
田 素弘作『紛争でしたら八田まで』は、フリーランスの女性地政学コンサルタントが世界の紛争現場を舞台に奔走するコミックです。主人公が「知性」と「地政」という二つの“チセイ”を駆使して問題に挑む姿は、地政学を生きた物語として体感させてくれます。ミャンマー、ウクライナ、インド、アイスランド、アメリカ、ナウル、シンガポール、日本…。一見遠いニュースに見える出来事が、どれほど複雑な利害とリスクに絡んでいるかを疑似体験できる作品です。
必ずしも完全解決するケースばかりではなく、紛争の種は残っていそうなケースもあるものの、こういった紛争の現場を知るという意味では興味深いコンテンツとなっています。
リスクコンサルティングのプロによる監修もなされていて、飽きさせないストーリー展開と相まって、各地の紛争の状況を知る事ができる書籍となっています。日本のコミックがカバーする話題の広さとそのクオリティは素晴らしく、想像力・妄想力を掻き立てるヒントとして多いに活用したい方にはお勧めです。
視点を広げる「地政学トレーニング」の効能
地政学は、未来を正確に予言するツールではありません。むしろ「あり得るシナリオを複数描くための土台」として機能します。
「世界がこう動いたら、どんな技術が必要になるだろう?」「この国が台頭したら、どんな供給網が変わるだろう?」
こうした問いかけこそ、テックリーダーの想像力を広げる練習になります。
書籍やコミックを通じて、実際に世界のマクロな動きを“物語”として体感することは、未来をデザインするうえで強力なツールです。目先のコードやプロジェクトを超え、社会全体のシステムを描く。その習慣が、変化の激しい時代において生き残る力へと変わっていきます。
そしてそれを描くために必要なのが、想像力と妄想力なのです。

