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自動車の次はロボティクス×AI。シニア社会という日本の勝ち筋

元PlayStation CTO・茶谷公之(ちゃたに まさゆき)さんの連載。第4回は、日本のディープテックが次の基幹産業になる道筋を聞きました。

自動車の次はロボティクス×AI。シニア社会という日本の勝ち筋

半導体からクラウドまで、技術の層を上りきった茶谷公之(ちゃたに まさゆき)さんに、今回はディープテックについて聞きます。日本のディープテックは、どうすれば次の基幹産業になれるのか。シリコンバレー型への疑問、スタートアップに人材が来ない構造、そして未来像の不在。厳しい現状分析の先に、茶谷さんは具体的な答えを持っていました。自動車の次は、ロボティクス×AI。それもシニア社会向けのものだと言います。

「シリコンバレー型が、ほんとに日本に合ってるのか」

──DEEPPOINTはディープテック特化メディアです。日本のディープテックは、どうしたら次の産業になれるんでしょうか。

茶谷公之 いわゆるシリコンバレー的なものって、世界で見てもシリコンバレーにしかできてないんですよ。ヨーロッパでもそんなにうまくできてない。ほんとにシリコンバレー型がいいのか?ってところには疑問をもった方がいいと思っていて。日本はもうちょっと違う形、もしかしたら、大企業ドリブンかもしれない。

──大企業ドリブン。スタートアップ側ではなく?

日本の場合、上流の人材が大企業にいて、外にいないのよ。これが結構課題で。シリコンバレーだったら、CEOがエンジニアだとしても、それを支えるCFOとか、マーケッターとか、サポートするプロフェッショナルがそこら中にいる。日本で一流のチームを作ろうとすると、めちゃ難しい。

──確かに、経験のある人はだいたい大企業にいるイメージですね。

大企業は居心地がいいから、なかなか外に出ない。だからスタートアップに、社長はいいけどそれ以外は……っていう会社ができちゃう。PlayStationがすごく良かったのは、ソニーじゅうから優秀な人材が来たことなんですよ。ミュージックの人も、エンジニアも、グローバルビジネスをやってた人も、経験のある人がぶわーっと集まった。あの状態をスタートアップで作ろうと思ったら、毎回交渉して、雇って、ストックオプションを渡して……ってやり続けないといけない。小さなスタートアップをたくさん作っても、それだけでは解決策にならないんですよ。

「新幹線には『日帰り出張』があった」

茶谷公之 もう1つ大きいのは、未来像。国の重点技術リスト(※)ってあるじゃない。あれって、戦略として選んだというより、いろんな分野の声を集めたら17個になりました、みたいに見えるんだよね。技術の一覧の前に、その上にできる社会像がちゃんと明確になってなきゃいけないと思ってて。

※日本成長戦略会議の『戦略17分野』

──社会像、ですか。

新幹線を作ったときは、それまで8時間かかっていた大阪が3時間になります、日帰り出張ができますよ、っていう明確なイメージがあったわけじゃない。じゃあリニアで1時間になったところでどうなんだろう、って、みんなうっすら思ってる。だからなかなか盛り上がらない。電気代が半分になりますとか、量子をやったらこうなりますとか、生活がどうなるかまで言わないと。

──技術の凄さじゃなくて、その先の暮らしを描く。メディアの仕事でもありますね。

自動車の次は、ロボティクス×AI

──茶谷さんご自身は、次にくる産業は何だと考えていますか?

茶谷公之 僕はもう、完全にシニア市場向けのロボットだと思ってる。ロボティクスとAIと、思いやり、みたいなものをちゃんと組み合わせたプロダクト。日本の65歳から80歳ぐらいの人たちのQOLを劇的に上げる。そうしたら遠出もできるから、お金も使うでしょ。みんな楽しく生きられると思うんだよね。

──たしかに、日本の切実な課題です。

たとえば介護ってね、認知症の方と会話してるとして、ロボットは100回同じことを言われても大丈夫なんですよ。人間はどこかでしんどくなってしまう。家族の心のほうが先に壊れちゃうんだよね。あとは、自動運転ができて家の前まで車が来ても、そこから自分で降りられない人がいっぱいいる。ホテルなら手伝ってくれる人がいるけど、自分の家にはいないから。コンパニオンロボットが降ろしてあげて、荷物を運んであげる。そういうところまでやって、初めて生活が変わる。

──そうですね。

で、20年後、30年後にタイとかベトナムみたいな今は若い国が年寄りの国になったときに、日本からそれを輸入してもらう。いまタイでホンダのバイクが売れてるのと同じですよ。自国で作ってもいいけど、日本のものが安くて、安全で、かっこいいから買う、っていう状態にする。日本はシニアが多いから、自分たちの市場でマーケティング実験もできるしね。

──それが「次の自動車産業」に一番近いと。

そう僕は思ってるけどね。技術的にも伸びしろだらけで、たとえば生物ってすごくエネルギー効率がいいんですよ。おにぎり1個でものすごく長い時間動けるじゃない。同じエネルギーでモーターを動かしたら、あっという間になくなっちゃう。だから人工筋肉みたいな新しい素材が生まれたら、ケミカルの世界の人たちの出番になる。大きなアプリケーションに向けて、各産業がいろんな提案をする状態が必要で、それには、やっぱり未来像なんですよ。

シニア×ロボティクスの未来図

<シニア×ロボティクスの未来図 画像提供:茶谷公之さん(Google Geminiで生成/資料より)>

取材・文:RUNA NAITO / 取材日:2026年7月31日

ディープテックDB

ロボティクスのディープテック企業98社・投資家136社・大学24校・研究機関0機関
内藤 瑠那
編集長
内藤 瑠那

青山学院大学経済学部卒業後、美容系専門商社、カカクコムを経て独立。メディア立ち上げ、インタビュー取材、SNS運用、コンテンツディレクション、Webマーケティングまで幅広く経験。「宣伝会議 編集・ライター養成講座」第49期最優秀賞受賞。DEEPPOINTでは、編集方針の設計、取材企画、記事制作、SNS発信を統括する。