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AIが“分かる”と“使える”をやる時代、人に残るのは“創る”こと。元PlayStation CTOから次世代へ贈る言葉

元PlayStation CTO・茶谷公之(ちゃたに まさゆき)さんの連載。第5回(最終回)は、生成AIと人間の距離感、そしてこれからのキャリアの話です。

AIが“分かる”と“使える”をやる時代、人に残るのは“創る”こと。元PlayStation CTOから次世代へ贈る言葉

40年前、ルールベースのAIに手書き文字を読ませていた茶谷公之(ちゃたに まさゆき)さん。最終回は、茶谷さんからはいまの生成AIがどう見えているのかと、これからの時代のキャリアについて聞きました。

生成AIは、なぜ漢字と指が苦手なのか

──第1回の手書き文字認識は、いまの言葉で言うと「第2世代AI」ルールベースのAIだったそうですね。

茶谷公之 そう、ルールベースのAIで文字認識をやってたんですよ。たとえば「題」っていう漢字は、横棒があって、斜めの棒があって、っていう部品でできてますという辞書があるんだけど、人によっては変な書き方をする人もいるから、ある程度それを想定しながら辞書を作る。ここは入れ替わるかも、みたいなナレッジを畳み込んでいくスタイル。いまの生成AIは全然そういうやり方をしないけど。でも、相変わらず生成AIって漢字が苦手だよね。

──あ、確かに。

生成AIで作った漢字の多い看板って、中国語でも韓国語でも日本語でもないような文字が出てるでしょ。漢字の構造がどうなってるかっていう知識がないんですよ。たくさんの画像を見て、なんとなくこんな感じ、っていうのを作ってる。よくあるのは指が6本あるとか、右手と左手が入れ替わってるとか。

──ありますね。文章はどうなんですか?

AIはどんどん進化しているので、将来もずっと同じではないけれど、きわめて単純化してしまうと、文章を見たときに、後ろに来るものを予測する。統計的な遷移で次の単語を選んでるんで、文法というより、遷移された単語列なんだよね。

──40年前に、漢字の構造を人の手でAIに教えていた人だから見える弱点ですね。

自分をAIにしてみたら見えたこと

──今日、お会いする前に「ちゃたにコンパス」とずっと話してきました。本に書かれていることを、ピンポイントで返してくれて驚きました。

ちゃたにコンパス

茶谷公之 これまで書いた本『未来を創るリーダーへの道標』の三部作と『プレイステーションの舞台裏』を学習させて、答えを返させているんです。本自体が、生存戦略、実践実行、未来展望っていう3つの軸でできてるんで、その軸に沿って答えるフレームワークを与えた。まあ、試行錯誤しながらね。

──じゃあ、この技術があれば、もし自分がいなくなっても思想や知識を残して、その人と話せるようにもなりますよね。

僕はそこには、倫理的に悩むところがあってね。法事ってあるじゃない。四十九日、一周忌、三回忌、七回忌って続いて、三十三回忌で一応終わるんだよね。法事で何をやるかっていうと、当時を知ってた人が集まって、故人のことを話して、みんなで思い出す。でも七回忌、十三回忌になるにつれて、だんだん集まる人も減っていって、フェードアウトできる設計になってるわけ。

──たしかに。だんだん、忘れていける。

デジタルは、その忘却っていう行為が難しい。全部残しちゃうこと自体が、ほんとに幸せかどうか分からない。痛みが減衰しなかったら、つらいじゃない。人間のいいところは、痛みはそのうち減っていくっていう設計になってること。ずっといつでも会えるっていう状態は、いつまでたっても悲しみから逃れられないんじゃないかなと思う。韓国の番組で、亡くなった女の子をデジタルで再現したことがあったけど。もう、その子は帰ってこないからね。余計つらくなるよね。

──いいことばかりじゃないですね。

伸びる人は、柔軟な人

──最後に、キャリアの話を聞かせてください。いまアドバイザーとして何社も見ているなかで、「この人は伸びる」と感じる共通点はありますか?

茶谷公之 うまくいきそうな人って、やっぱり柔軟な人だと思うんだけどね。思い込んでこっちに行っても、うまくいくとは限らないから。「ああ、そっちじゃないんだ」と思って、柔軟に戦略を再設計したり、1回戻って考えたりできるほうが、突き進むよりは成功率が上がると思うんだよね。

──推進力そのものより、方向を変えられる柔らかさですね。

推進力はね、間違った方向に推進しても成功しないから。

──柔軟な人は、なんで柔軟でいられるんだと思いますか?

多分、謙虚だから。自分に自信がありすぎると、自分の方向が間違ってるって思えない。

──うまくいかない人は、考えすぎて動けなくなる場合もありませんか。

やる前から極度に考えすぎて、やめちゃう人ね。やってみないことには、成功もしないし、失敗もしないんだよね。うまくやりたいんだったら、やってみることは大事だと思うけどね。

──茶谷さんの本には、成功の秘訣は「ネアカ」であること、とも書かれていますよね。

あんまりネガティブに捉えない、っていうことなんですよ。あとはね、好きなことだったら24時間やっちゃう人たちには勝てない。努力しなきゃいけない人は勝てないですよ。だから逆に言うと、大好きでしょうがないものを見つけたら勝ちなんだろうなとは思う。何時間やっても疲れを感じないもの。さらに、それでお金がもらえて仕事になればさ、最高ですよ。

──これから社会に出る人は、どこから始めるのがいいと思いますか?

新卒でスタートアップに行っても、なんか、同じところをぐるぐる走ってるような感じになっちゃう気がする。大企業のほうがいろんな人がいるから、人間観察には大企業がいいんじゃないかと思うんだけどね。僕はね。で、加速したいなら戦略コンサル。同じ3年、4年分の経験を半年でできる、大企業にいる状態の加速装置みたいなものだと思ってます。

──40年、ずっとワクワクするほうを選んできたんですね。

取材・文:RUNA NAITO / 取材日:2026年7月31日

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内藤 瑠那
編集長
内藤 瑠那

青山学院大学経済学部卒業後、美容系専門商社、カカクコムを経て独立。メディア立ち上げ、インタビュー取材、SNS運用、コンテンツディレクション、Webマーケティングまで幅広く経験。「宣伝会議 編集・ライター養成講座」第49期最優秀賞受賞。DEEPPOINTでは、編集方針の設計、取材企画、記事制作、SNS発信を統括する。